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第355話

そして、その時、突然部屋のドアが開いた。里香は顔にパックを貼ったまま、冷たい目で彼らを見つめていた。

「何してるの?」

鍵屋は一瞬戸惑い、無意識に雅之の方を見た。

雅之は彼女をじっと見つめ、少しかすれた声で言った。「里香、君がこんな大変な目に遭うなんて思わなかった、僕は......」

「それで、まだ何か用事?」里香は彼の言葉を冷たく遮った。

雅之は唇を一文字に結んで、胸の中に強い感情が渦巻いているのが見えた。

「中に入れてくれ。話があるんだ」

「眠いの。寝たいんだけど」と里香は淡々と答えた。

でも、雅之はドアを押さえて閉めさせなかった。

里香は彼を見つめ、ふと問いかけた。「もし今日、私が助からずに連れ去られてたら......後悔した?」

「そんなことにはならない。僕が必ず君を見つける!」

「後悔したの?」里香はその答えにこだわった。

でも、彼女にはわかっていた。そんなこと、もうどうでもいいって。

雅之が自分の危険を知っていながら、彼女を置き去りにして夏実のところに行った時、里香はもう絶望してしまっていた。完全に。

雅之は堪えきれず言った。「だから、そんなことは起こらないって言ってるだろう!君を連れ去らせたりしない」

「どうせ後悔しないんでしょ?私がいなくても、夏実がいるし、優花だっている。他にも女の一人や二人いるかもしれないしね。だから、もう私に関わらないで。本当に疲れたの、休みたい」

そう言って、里香は雅之の指をほどこうとした。

でも、雅之は無理やり部屋に入り込んだ。

ドアが彼の後ろで閉まり、その鋭い目で里香を見据えた。「どうして話を聞こうとしないんだ?夏実のところに行ったのは、彼女が知ってたからで......」

「どうでもいい」

里香は二歩下がり、距離を取った。雅之の喉は何かに締め付けられたようで、呼吸さえ苦しくなった。

里香の態度は昔と変わらない。いつだって彼に対して冷淡だった。

でも、雅之は違いを感じ取っていた。今の里香の目には、ただ氷のような冷たさしか残っていない。前は少しでも感情の揺れがあったのに、今は何も感じられなかった。それがたまらなく不愉快だった。

雅之は里香の手首を掴み、ぐっと引き寄せて低い声で問いかけた。「もう一度言ってみろ!」

「何度言っても同じよ。どうでもいい。誰と一緒にいようが、どこにいよう
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