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第357話

里香は冷たい表情を浮かべながら、雅之の腕から抜け出そうとした。だが、次の瞬間、腰をグッと引き寄せられ、再び彼の元に戻された。

背中が雅之の温かい胸に押しつけられ、彼の熱い息が耳元にかかる。

「そんなに早く起きてどうするんだ?」

朝の雅之の声は少し掠れていて、いつもとは違う何かが漂っていた。

里香はそれを敏感に察知し、体が硬直した。朝から雅之が獣のように荒れ狂うことを恐れ、動けずにいた。

「お腹が空いた」

感情を押し殺し、無表情でそう答えた。

雅之は里香をしっかりと抱きしめ、その熱がまるで彼女を溶かそうとしているかのようだった。

「僕もお腹が空いた」

彼の声はさらに掠れていた。里香はまばたきをし、ふと何かを思い出したようだった。

雅之が離婚しないのは、まだ自分の体に興味があるからなのかもしれない。もし彼が興味を失ったら、その時こそ二人の関係は終わるのだろうか?

突然、得体の知れない悲しさが胸にこみ上げてきた。

「私は嫌だ」

雅之の唇が彼女の肩に名残惜しそうに触れ、手は里香の柔らかな肌を軽く撫でていた。

里香が震えているのを感じると、雅之はさらに強く抱きしめ、「本当に嫌か?」と低く囁いた。彼の唇が里香の耳たぶに触れ、「でも、体は正直だろう?」と言い放つ。

その言葉に、里香の体はさらに激しく震えた。

女性にも欲望はある。特に、雅之が故意に敏感な部分に触れている時、里香は抗うことができなかった。

雅之は彼女の変化を感じ取りながら、低く掠れた声で「前菜を少し楽しんでからにしようか?」と囁いた。

里香は唇を噛み、声を押し殺して耐えようとした。

しかし、雅之はあたかも彼女に声を出させることに執着しているかのように、動きを激しくした。

ついに里香は堪えきれず、甘く掠れた声を漏らした。その挑発的な声に、雅之は「気持ちいいか?」と問いながら、里香の頬にキスを落とし、彼女の顔をじっと見つめた。

里香の頬は真っ赤になり、美しい瞳にはうっすらと涙が浮かんでいた。その表情は、明らかに感じていることを物語っていた。

雅之は、自分の手の中で震える里香の姿に満足し、彼女を圧倒するような感覚に支配された。

突然、里香は振り向き、雅之の唇に強くキスをした。

雅之はすぐにそれに応じ、主導権を握った。二人の息が絡み合い、瞬時に火がついたようだった。

だが、里
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