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第257話

里香は一瞬固まり、慌てて身を引きながら「もういい加減にして」と言った。

雅之はじっと里香を見つめ、何も言わなかった。

里香は深呼吸をして、雅之のベルトを外し、次にズボンに手をかけた......最後の瞬間、里香は急に背を向けて「私、急に思い出したんだけど、まだ荷物を片付けてなかった。ちょっと片付けてくるね」と言った。

そう言うと、すぐにその場を離れようとした。

雅之は「何を片付けるんだ?」と尋ねた。

里香は振り返らずに「服よ。前に着替えた服、まだ洗ってないから、洗ってくる」と言った。

里香は急いで手を引き抜き、次の部屋に入った。

雅之は深い息をつき、視線を落として一瞬だけ考えた後、主寝室に向かった。

里香はドアに寄りかかり、顔を手で覆いながら冷静になろうとした。さっきは本当に危なかった。思い出すと、あの「目覚めかけていた部分」に気づき、里香は急いで洗面所に入り、冷たい水で顔を洗った。

出てきたとき、雅之はすでにバスローブを着て、ソファに座っていた。

里香はドレスを脱いで自分の服に着替え、雅之に向かって「じゃあ、今日は帰るね。明日また来るから」と言った。

雅之はその言葉を聞いて眉をひそめ、「帰る?じゃあ、誰が僕の世話をするんだ?」と不満そうに言った。

里香は「左手を怪我しただけでしょ?普通に生活するのに問題ないじゃない」と答えた。

雅之は細長い目でじっと里香を見つめ、「僕の左手、どうして怪我したんだ?」と問いかけた。

里香は言葉に詰まり、少し間を置いてから「荷物を片付けに行くの。まだホテルに荷物が残ってるから」と言った。

その言葉を聞いて、雅之の冷たい表情が少し和らぎ、顎を軽く上げて「行ってこい」と言った。

里香は背を向けてすぐに部屋を出た。まるで後ろに何か恐ろしいものが迫っているかのように急いでいた。

雅之はスマホを取り出し、桜井に電話をかけた。「里香に二人つけて、里香の安全を守れ」

桜井は「承知しました」と答えた。

里香はホテルに戻り、簡単に荷物をまとめた。ソファに座って、この夢のような急展開を思い返すと、気分が悪くなった。

この町に来たのは雅之から逃げるためだったのに、どうして結局同じホテルに泊まることになったんだろう?本当に運命って皮肉だわ!

その時、里香のスマホが鳴った。画面を見ると、哲也からの電話だった。

「もしも
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