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第243話

里香は二度ほど手を振り払おうとしたが、雅之の手はびくともしなかった。里香の顔は冷たくなり、「じゃあ、他に何があるの?私はちゃんと聞いておきたいのよ。どうして哲也を狙うの?彼はあなたに何もしてないわ」と言った。

「してるさ」雅之は冷たく言い放った。

里香は驚いて、「いつ?」と尋ねた。

雅之は里香の手を放し、冷ややかに見つめながら言った。「なんで僕が教えなきゃいけない?お前は彼の何なんだ?どんな立場で僕に文句を言ってる?」

「あなた......」里香は言葉を詰まらせ、彼の無茶苦茶な態度に呆れと無力感を覚えた。

雅之がこんな風に出てくると、どうしようもない。

しかも、彼の様子からして、哲也を簡単に許すつもりはなさそうだ。哲也を巻き込んでしまったのは自分だし、この問題を解決しなければならない。

里香は深呼吸して気持ちを落ち着け、少し柔らかい口調で言った。「もし彼が何か失礼なことをして、あなたを怒らせたのなら、私が代わりに謝るわ。あなたはDKグループの社長で、容姿端麗で器も大きい。彼みたいな人に目くじら立てないで、ね?」

だが、里香の言葉が終わるや否や、雅之の顔はさらに冷たくなり、嘲笑を浮かべた。「お前が代わりに謝る?お前は誰だ?あいつは誰だ?」

里香は黙り込んだ。

雅之の冷たい目元を見つめながら、里香は悟った。彼は哲也を許すつもりがない。

里香は雅之の美しい顔をじっと見つめ、「どうすれば哲也くんを許してくれるの?」と問いかけた。

雅之はソファに腰を下ろし、長い脚を組んで、里香を見上げた。その目は暗く深く、まるで里香を追い出したいかのようだった。

里香が他の男のためにここまで来て、しかもその男のために懇願しているなんて!

しかも、なんだその馴れ馴れしい口調は!代わりに謝るだって?あの男が、里香にそんなことをさせる資格があるのか?

雅之の視線に里香は全身がざわざわした。雅之から離れたくて仕方なかったが、病院にいる哲也のことを思い出し、気持ちを落ち着けてここを離れないようにした。

「こっちに来い」雅之が突然言った。

里香は嫌な予感がした。雅之に近づいても、ロクなことにならない。しかし、今は雅之に主導権があるから、里香は従うしかなかった。

雅之の前に歩み寄り、「何?」と尋ねた。

すると、雅之は自分の唇を指さし、意味ありげな目で里香を見つめた。

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