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第248話

雅之は優花を軽く押しのけて、小さな箱を取り出し、「誕生日おめでとう」と言った。

優花は嬉しそうにそれを受け取り、「ありがとう、雅之兄ちゃん!雅之兄ちゃんのプレゼント、大好き!」と笑顔を見せた。

中身なんてどうでもいい。大事なのは、誰がくれたかということだ。

雅之は穏やかに微笑んで、「気に入ってもらえてよかった」と応じた。

その時、優花は雅之の隣にいる里香に気づき、彼女の腕に回っている手を見て、顔色が一気に変わった。そして、いきなり里香を押しのけて雅之にしがみついた。

「あなた誰?雅之兄ちゃんに触るなんて、何様のつもり?」

その高飛車な態度は、まるで甘やかされた姫のようだった。

里香は驚いてよろけたが、雅之にすぐに引き寄せられたおかげで、なんとかバランスを保った。

里香の目には一瞬冷たい光がよぎったが、何か言おうとした瞬間、雅之が警告するような目で彼女を見た。

仕方ない、ここは我慢するしかなかった。

優花は雅之にしがみついたまま、内側へと歩き出した。「雅之兄ちゃん、前にあったこと聞いたよ。無事に戻ってきて本当によかった。お父さんもずっと心配してたの。中で待ってるわ」

「うん、大したことじゃない」

雅之は淡々と答えた。

里香は少し距離を置いて二人の後ろを歩いていた。優花が雅之にぴったり寄り添っているのを見て、里香は考え込んだ。

夏実は優花が雅之を好きだって知ってるのか?優花は夏実の存在を知ってるのか?

優花と夏実、二人は全然違うタイプだ。一方は江口家に大事に育てられたお嬢様、もう一方はあまり重要視されていない娘。比べるまでもない。

でも、もし二人が対峙したら、雅之はどっちを選ぶのだろう?

そんなことを考えている自分に気づいて、里香はハッとした。視線を再び雅之に戻す。

雅之は優秀で、ハンサムで強い男だ。異性を引きつけるのも無理はない。そんな彼が心を寄せるのは夏実なんだ。

自分も、優花も、夏実には敵わない。恋愛においては、愛される人が勝者だから。

「ちょっと、なんでついてきてるの?誰が許可したの?さっさと出て行きなさいよ!雅之兄ちゃんにまとわりつかないで!」

そんなことを考えていると、突然優花の声が響いた。

反応する前に、また優花に押された里香は眉をひそめ、じっと優花を見つめた。「私は雅之さんのパートナーです。だから、ずっとそばに
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