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第225話

里香はホテルに戻ったが、まだ心が落ち着かない。

雅之が安江町に来たなんて。しかも、あの様子だとしばらくここに滞在するつもりらしい。

それなら、私がここにいるわけにはいかない!

里香は眉をひそめて少し考えた後、スマートフォンを取り出して幸子に電話をかけたが、幸子は全く電話に出なかった。里香の顔は一気に険しくなった。

何度も無視されて、まるで自分が弱い存在だと思われているのか?いい加減にしてほしい。

里香はすぐに別の番号に電話をかけ、その後シャワーを浴びて、眠りについた。

翌朝。

昨夜のことを思い出し、幸子の気分は上々だった。前に里香に逃げられたが、昨夜はさすがに逃げられなかったはず。

前田様はずっと里香のことを気にかけていたのだ。

幸子は子供たちの部屋を見に行こうとしたが、その時、玄関のドアがノックされた。

「誰よ?今行くわよ!」

幸子は急いで玄関に向かい、ドアを開けると、数人の警察官が立っていた。

幸子は一瞬驚き、「何ですか?」と尋ねた。

警察官の一人がまず身分証を見せ、厳しい表情で口を開いた「あなたは児童誘拐や女性の売買などの違法取引に関与しているとの通報がありました。今すぐ署までご同行願います」

幸子はその場で固まってしまった。「違うわ!私はそんなことしてない!私は孤児院の院長よ!そんなことするわけないじゃない!」

警察官は冷静に言った。「詳しいことは、警察署で話しましょう」

幸子はそのまま強制的に連行された。

里香がこのことを知ったのは、哲也からの電話だった。

里香はホテルで朝食を取っている最中だった。哲也の心配そうな声を聞きながら、里香は淡々と答えた。「私が昨夜どこにいたか知ってる?」

哲也は驚いて、「昨夜どこにいたんだ?」と尋ねた。

里香は軽く笑い、「昨夜、院長が私をに呼び出して、前田に売り飛ばそうとしたのよ」と言った。

哲也は驚愕して、「そんなことあり得ない!何か誤解があるんじゃないか?」と信じられない様子で言った。

里香は続けた。「5年前にも、院長は私を一度売り飛ばしたのよ。あの時は、私が前田を殴って混乱に乗じて逃げたから助かったけど。私が逃げた後、院長はあなたたちに何て言ったの?」

哲也はショックで言葉を失っていた。

彼の記憶の中で、幸子はただ性格が悪く、少し癖があるだけの人だったが、根は良い人だと思っ
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