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第230話

里香は淡々と言った。「私は彼のパートナーだから、もちろん一緒に行くわ」

雅之の顔色は「険しい」という言葉そのものだった。

この女、自分の立場がわかってないのか?

「里香、こっちに来い!」

雅之の低い声が冷たく響き、周囲に冷気が漂った。

でも、里香は全然動じなかった。

この男、私を何だと思ってるの?呼ばれたからって従うなんて、思ってる?

雅之は冷たい目で彼女を見つめ、「今ここに来れば、これまでのことは水に流す」と言った。

里香は軽く笑い、「行くけど、離婚してくれるならね」と返した。

その言葉が落ちた瞬間、周囲の空気が凍りついた。

里香はいつもこうだ、あえて「離婚」なんて口にするなんて。しかも、他の人の前で堂々と!

雅之の中で怒りが燃え上がり、彼女を睨みつける。その視線はまるで彼女の顔に穴を開けるようだった。

里香は少し怯んだ。雅之を怒らせると、ろくなことがないのはわかってる。でも、折れる気にはなれなかった。

彼が私をあんなに傷つけておいて、どうして私が折れなきゃならないの?

祐介はその様子を興味深そうに見ていた。二人とも頑固だから、こんな二人がうまくやれるはずがない。むしろ、早く離婚した方がいいだろう。

祐介がタイミングよく口を開いた。「二宮さん、俺みたいな外野でも、あなたが夏実さんにした約束を知ってるんです。今夜離婚届にサインして、明日結婚証明書を取りに行くのはどう?そうすれば、夏実さんに責任を果たせるよ」

里香はその言葉に胸が締め付けられるような痛みを感じた。

彼女は目を伏せ、ドレスの裾をぎゅっと握りしめた。

祐介のチャラい表情を見て、雅之の目に冷酷な殺意が一瞬浮かんだ。そして、突然雅之は里香に近づき、彼女の後頭部を掴んで強引にキスをした。

激しく求め合うようなキスだった。

里香は驚いて目を大きく開き、反射的に雅之を押しのけようとした。

しかし、雅之はすぐに彼女から離れ、冷たい目で見つめながら、唇の端に悪戯っぽい笑みを浮かべた。「離婚して彼と一緒になりたい?死んだ後なら考えてやってもいいかもな」

里香は怒りで震えた。

雅之は彼女の手首を掴み、そのまま連れて行こうとした。

だが、祐介が里香のもう片方の手を引き止め、狐のような目に冷たい光が宿った。「二宮さん、今夜の彼女は俺のパートナーです」

雅之の視線が再び里香に向け
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