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第235話

里香は言った。「それで、ゆかりと連絡が取れる?」

哲也は首を振った。「取れないんだ。ゆかりは実の両親が見つかってから、たまに幸子さんと連絡を取るくらいで、俺たちとはもう全然連絡が取れなくなった」

里香は眉をぎゅっと寄せた。

そうすると、幸子はゆかりの家族に保釈されたのか。ゆかりの家族は相当な権力を持っているようで、見つけるのは簡単じゃなさそうだ。

つまり、実の両親が誰なのか、自分にはもう知る術がないのだろうか?

哲也は里香が考え込んでいるのを見て、「どうした?」と尋ねた。

里香はハッと我に返り、首を振って「なんでもない。幸子さんがいなくなったから、もう戻ってこないかもしれない。これからどうするつもりなの?」と聞いた。

哲也は茫然と首を振った。「俺も分からないんだ」

空が少しずつ明るくなってきた。里香は空を見上げてから、「私は警察に行って、何か手がかりがないか聞いてみるわ」と言った。

哲也は「じゃあ、俺も一緒に行くよ」と言ったが、里香は首を横に振り、「哲也くんは孤児院に残って。幸子さんがいなくなったから、誰かが子どもたちの面倒を見ていないと」と答えた。

哲也は頷いて、「分かった。何か分かったら、すぐに教えてくれよ」と言った。

「もちろん、そうするよ」

里香はそのまま立ち上がり、警察に向かった。

警察署の近くに着くと、まず朝食を取り、その後すぐに署内に入って状況を聞き出した。

結果は、哲也が言っていた通りだった。警察は誰が幸子を保釈したのか教えてくれなかったが、明らかに上から何らかの指示があったようだ。

里香は警察署を出て、街を歩きながら複雑な表情をしていた。

失望していないと言えば嘘になる。里香が安江町に戻ってきたのは、実の両親を探すためだった。しかし、その唯一の手がかりである幸子は今や行方不明。

ゆかり......

里香の脳裏に小さな女の子の顔が浮かんだ。高校に入ってからは孤児院にあまり戻らなかったので、ゆかりたちのことはあまり覚えていない。

今思い返そうとしても、記憶はぼんやりしているが、幸子がゆかりを特に可愛がっていたことだけは覚えている。

子どもの頃、ゆかりが何か欲しがると、幸子に言うだけで、幸子はすぐにそれを取り上げてゆかりに渡していた。

里香は頭を押さえ、タクシーを捕まえてホテルに戻った。

目が覚めた時、すでに午
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