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第238話

里香は目を細めて、「見た目が良くて、優しくて、時々ちょっと強引だけど、私にはとにかくすごく優しい、何でも言うことを聞いてくれる人......」と答えた。

その時、頭の中に浮かんできたのは雅之の顔。いや、正確にはまさくんの顔。

まさくんが優しく微笑んで、里香を溺愛するような目には愛情と包容力があふれていた。それは、記憶を失った時のまさくんだった。里香のまさくん。

哲也の目がさらに輝き、何か言おうとしたその瞬間、里香が急に立ち上がった。しかし、酒のせいで頭がふらつき、立ち上がった瞬間に体がよろけてしまった。

「危ない!」

哲也はすぐに立ち上がり、彼女を支えた。里香はふらふらと彼の胸に倒れ込んだ。

その光景を、遠くから一人の男がじっと見ていた。

「ごめん......」

里香は頬を赤らめ、哲也を見上げながら潤んだ瞳で謝意を浮かべた。つい飲みすぎてしまったのだ。里香はお酒があまり強くない。こういうカクテルなら半分くらいは大丈夫だけど、それ以上飲むとすぐに酔ってしまう。

哲也は耳まで真っ赤になりながら里香を支え、「酔っちゃったね。テントの中で休んだ方がいいよ」と言った。

そう言いながら、哲也は里香をテントの中へ連れて行こうとしたが、里香は首を振って「いや、星を見たいの」と言った。

里香が立ち上がったのは、綺麗な星空を見たからだった。

夜の帳が降り、大地は闇に包まれ、星々がキラキラと輝いていた。その光景は本当に美しく、純粋だった。

里香はニコニコしながら哲也を見て、「本当だ、すごく綺麗だね。嘘じゃなかった」と言った。

里香は哲也にとても近く、その甘い香りと酒の匂いが漂ってきた。化粧をしていない彼女の顔は整った美しさで、眉目は柔らかく、酒のせいで目尻がほんのり赤く染まっていて、なんとも魅力的だった。

哲也は心臓が飛び出しそうになり、視線が自然と里香の唇に向いた。

「里香、俺、君に......」

しかし、その言葉を言い終える前に、彼は突然押しのけられ、里香も誰かに引き離された。

哲也は二歩後ろに下がり、体勢を整えて目を上げると、冷たく高貴な雰囲気を纏った男が里香を抱きしめていた。その男の鋭い漆黒の目が冷ややかに哲也を見つめていた。

哲也は背筋がぞくっとしたが、それでも「誰ですか?」と尋ねた。

雅之は冷たい口調で「彼女に聞いてみたら?」と言いなが
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