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第236話

里香は少し心配そうに言った。「雅之の友達なんだから、気性が荒いはず。もし本当に怒らせたら、早めに逃げた方がいいよ」

かおるは自信満々で、「大丈夫、ちゃんと逃げるから」と言いながら、まだその状況を楽しんでいる様子だった。

里香は立ち上がり、「私はあと数日で帰る予定だけど、帰った時には無事でいてね」と言った。

かおるは不満げに、「ねえ、もうちょっと応援してよ」とぶつぶつ言った。

里香は笑いながら、「分かった。じゃあ、月宮を手のひらで転がして、愛に溺れさせて、最後には命を懸けるくらいにしてみせて」と冗談を言った。

かおるは、「それ、ちょっと怖すぎるんだけど」と苦笑した。

里香は笑って、「まあ、これくらいにしておくね。まだやることがあるから、またね」と言った。

「分かった、じゃあね、チュッ」とかおるはふざけて言った。

電話を切った後、里香は身支度を整え、洗面所から出るとちょうどスマートフォンが鳴った。

画面を見ると、哲也からの電話だった。里香は電話を取り、「もしもし?」と応じた。

哲也の穏やかな声が聞こえてきた。「里香、ちゃんと休めた?」

「うん、休めたよ」と里香は答えた。「どうしたの?」

哲也は少し間を置いてから、「俺、孤児院を引き継ごうと思ってるんだ」と言った。

里香は驚いて、「本当に?孤児院を引き継いだら、やりたかったことができなくなるかもしれないけど、それでも大丈夫?」と聞いた。

哲也は真剣な声で、「ちゃんと考えたんだ。幸子さんがいなくなって、子どもたちはどうなる?他の孤児院に送られるかもしれないけど、そこがここより良いとは限らない。だから、俺が残って新しい院長になることに決めたんだ」と答えた。

里香は少し考えてから、「それもいいかもしれないね」と同意した。

哲也は笑い、「友達がキャンプ場をやってるんだ。見に行かない?断らないでくれよ。院長になったら、君を食事に誘う時間もなくなるからさ」と冗談っぽく言った。

里香は微笑んで、「いいよ、いつなの?」と答えた。

「今日だ。後で迎えに行くよ」と哲也が言った。

「分かった」

電話を切った後、里香は服を着替え、長い髪をまとめて、さっぱりとした雰囲気で準備を整えた。

下に降りると、すぐに哲也が里香を見つけ、手を振って立ち上がった。

里香は「この時間にキャンプに行くなんて、遅くない?」と
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