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第232話

説得聞き入ってしまいそうな誘導的な口調。

突然、熱い息が里香の耳元にかかり、男の低く渋い声が響いた。「北村蘭、北村家の一人娘だ。彼女に絡むなんて、喜多野は何を企んでると思う?」

その言葉が終わると、雅之はじっと里香の顔を見つめた。

里香は祐介のパートナーとしてこの晩餐会に出席しているが、祐介は里香のことを全く気にかけていなかった。

里香は淡々とした表情で、その会話はもう聞きたくないと言わんばかりに、雅之に向かって尋ねた。「これを見せるために、わざわざ私をここに呼んだの?」

雅之は凛々しい眉を少し上げ、「あいつにとって、お前はただの使いやすい道具だ」と言った。

「それで?」

里香の口調は軽く、まるで何も気にしていないようだった。

雅之は里香の腰をぐっと引き寄せ、低く囁いた。「あとで僕と一緒に出よう」

すると、里香は突然鼻で笑った。「これを見せたからって、私があなたについて行くと思ってるの?」

雅之はその言葉を聞いて、顔色が少し暗くなった。「どういう意味だ?」

里香は雅之を押しのけ、「言ったでしょ、今夜は祐介さんのパートナー。あなたとは何の関係もないわ!」と冷静に言い放ち、元の道を戻っていった。

里香が祐介の頼みでこの晩餐会に参加したのは、ただ祐介に恩返しをするためであり、祐介が誰とどういう関係にあるかなんて、里香には全く関係ない。

滑稽なのは、雅之が、里香が祐介と他の女性が話しているのを見たら、自分の元へ来ると思っていることだ。

雅之は、里香が祐介を好きだと思っているのか?

心の中で、何とも言えない痛みが走った。自分が今誰を好きなのか、雅之はまだ分かっていないのだろうか?

淡い嘲笑が里香の瞳に浮かんだが、すぐにその感情を抑えた。しかし次の瞬間、里香の手首が掴まれ、強引に引き戻された。

雅之は彼女を抱きしめ、ふてくされるようにその耳を軽く噛んだ。

「きゃっ......!」里香は驚いて、思わず声を上げた。

「誰かいるのか?」

祐介と蘭がその声を聞きつけ、こちらを見ると、里香はとっさに口を押さえ、声を出さないようにした。

もし見つかったら、かなり気まずいことになる!

雅之は里香の考えを見抜き、悪戯に彼女の耳にキスを落とし、手は彼女の腰に伸びた。雅之は里香の敏感な場所を知っていて、そこを狙って触れた。

里香は息を呑み、また声を出し
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