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第216話

里香は微笑んで言った。「あなたもすごく変わったね。もし声をかけられなかったら、絶対に気づかなかったよ」

二人は孤児院で一緒に育った。子供の頃はそれなりに仲が良かったけど、後にいろいろなことがあって、だんだん疎遠になっていった。

里香はその後、大学に進学し、彼らとの連絡も途絶えてしまった。

哲也は尋ねた。「俺たちに会いに戻ってきたの?」

「うん、そうだよ」

里香は頷いた。

本当は少し時間を置いてから帰ろうと思っていたけど、それは無理そうだ。

哲也の目が輝いた。「そりゃあ良かった!里香が戻ってきたら、院長はきっと大喜びだよ。ここ数年、ずっと里香のことを話してたんだ」

里香は微笑んで、「ちょっと買い物に行くけど、一緒に来る?」と聞いた。

「もちろん!」

哲也は頷いた。

その後、里香は哲也がちょうど卒業したばかりで、まだ仕事を見つけていないこと、そして安定した仕事を探すために安江町に戻ってきたことを知った。そうすれば、時々孤児院を手伝うことができるからだと言う。

里香はただ微笑んで聞いていたが、目の奥には淡々とした感情が浮かんでいた。

買い物を終え、荷物を車に積み込むと、里香は「さあ、帰ろう」と言った。

哲也は車のドアを開けながら、感慨深げに言った。「そういえば、俺たち孤児院出身の中で、一番成功したのは里香だよね。安江町を出て、あんな大きな街の冬木に行ったんだから。今はどこで働いてるの?」

里香は淡々と答えた。「今は仕事してないよ」

辞めたばかりだから、仕事がないのも当然だ。

哲也は一瞬驚いたが、すぐに笑って、「大丈夫だよ、仕事なんていくらでもあるさ。きっとまたいい仕事が見つかるよ」と言った。

「そうだね」

里香は記憶に残る道を辿り、孤児院に戻ってきた。

孤児院は昔と変わらず、三階建ての小さな建物で、周りには高い塀があり、大きな門は固く閉ざされていた。中からは時折、子供たちの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。

哲也は車を降りて門を開け、中の人たちに呼びかけた。「院長、見てください、誰が帰ってきたと思いますか!」

足音が雑然と近づいてきて、驚きに満ちた声が響いた。「ゆかりが帰ってきたのかしら?やっぱりそうだと思ったわ。私が一番可愛がってたゆかりね。お金持ちと結婚して、私に恩返しすると言ってたのよ。やっぱり、忘れてなかったのね!」

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