共有

離婚当日、元夫の叔父に無理やり婚姻届を出させられた
離婚当日、元夫の叔父に無理やり婚姻届を出させられた
著者: 春うらら

第1話

妊活3ヶ月目、湯川友梨は夫・健のLINE上に、秦さんという人物からのメッセージを目にした。

「新しく買ったナイトウェア、ちょっとキツいかも。小さいかどうか、ちょっと見てくれない?」

そのメッセージの下には、Vネックの赤いキャミソールを着た女性の自撮り写真が添えられていた。半分露わになった胸元は、極めて挑発的で、誘惑的だった。

スマホを握る友梨の手は無意識に強ばる。さらにメッセージの履歴を遡ってみると、二人のやりとりは普通の仕事の話だったことに気づき、思わず眉をひそめた。

これは誤送信なのか?それとも…

考え込んでいた彼女の腰に、突然背後から手が回ってきて、思考が遮られる。

健の熱い体が彼女に触れ、耳たぶを軽く噛んだ。

「お風呂から上がったよ。ソファでするか?それともベッドでか?」

友梨が反応する前に、横抱きでソファに運ばれ、健はそのまま上に覆いかぶさった。

「黙っているなら、俺が決める。ソファでいいな」

彼の声はかすれており、こっちの目を見つめるその視線には炎が燃えているかのようだった。友梨の顔は一瞬で赤く染まる。

もともと美しい彼女の顔は、灯りに照らされ、まるで熟した桃のように艶やかで、見る者の心を引きつける。

健の眼差しはより深くなり、向こうの唇を奪おうと顔を近づけたが、友梨は突然顔をそらした。

妻の抵抗を感じた健は、戸惑った表情で友梨を見つめる。

「友梨、どうしたの」

普段、会社では冷静で厳しい男だが、この時ばかりは悲しげな顔で彼女を見つめていた。その姿に友梨の心は少し和んだものの、彼女はあの露骨な自撮り写真のことを忘れてはいなかった。

彼女は片手で健の胸を押し、もう一方の手でスマホの画面を彼の目の前に差し出した。

「これ、どういうことか説明して」

一瞥し、顔を険しく歪めると、健はすぐにスマホを手に取り通話をかけた。

間もなく通話が繋がり、相手の声が聞こえる。

「社長、何かご用ですか?」

健の顔は陰り、声も冷たく響いた。

「いつから秘書が客を取るようになったんだ」

数秒の沈黙の後、秦真知子は慌てた声で答えた。「社長、申し訳ありません…あのメッセージは彼氏に送るつもりだったんです…たぶん、間違って送信してしまいました…」

「次はない。次やったらお前はクビだ」

通話を切って友梨を見た瞬間、彼の冷たい表情は再び優しくなった。少し悔しそうでもあった。

「友梨、秦はただ間違えただけだよ。もしまだ怒っていたら、明日彼女を解雇するよ。でももう遅いから、人のことに無駄に時間を使わないで。もう1週間も会ってなかったし、今夜はたっぷり埋め合わせしてほしい」

そう言いながら、彼は再び彼女を抱きしめ、キスをした。

だが、説明がついたとしても、友梨の気分はすっかり悪くなってしまい、その気にはなれなかった。

彼女は健を押しのけて言った。「今日は少し疲れてる…明日の夜にしよう。」

健は少しがっかりした顔を見せたが、無理強いはしなかった。

「わかった。じゃあ、先に寝ててくれ。俺はまだ眠くないから、書斎で少し仕事をする」

「うん」

真夜中、窓の外で大雨が降り出した。

雨音で目を覚ました友梨が隣を手で探るが、誰もいなかった。

彼女が振り返って時計を見ると、午前3時16分だった。

健はまだ仕事をしているのだろうか?

起き上がり、バスローブを羽織り書斎に行くと、彼女は扉を開けた。しかし、中は真っ暗で、健の姿はなかった。

ドアノブを握る彼女の手には無意識に力が入り、心はどんどん沈んでいった。

「ピコン!」

突然、静かな夜にひときわ目立ったスマホの通知音が鳴る。

見知らぬアイコンの友達申請を見た友梨は、直感的に感じた。もしこの相手の申請を承認したら、もう健との関係は元には戻れない、と。

ちょうどその時、窓の外で雷鳴が轟き、友梨は驚いて手を震わせ、うっかり「拒否」をタップしてしまった。

そして、すぐにまたいくつか友達申請が届いた。

「まだ起きてる?旦那さんが隣にいないから寝られないの?」

「雷のせいで停電して怖かったけど、彼が心配して来てくれたわ。」

「旦那さんが今どこにいるか知りたくない?」

……

次々と送られてくるメッセージと、その不敵な態度に、友梨のスマホを握る手が震えた。

しばらくして、彼女は友達申請を承認した。

友達申請を承認した直後、相手から住所と一連の数字が送られてきた。

友梨は唇を噛みしめ、車のキーを手にし、そのまま車を走らせる。

午前4時過ぎ、別荘に到着した。送られてきた数字を入力すると、扉が開いた。

リビングの灯りはついていて、玄関から寝室まで、男性のスーツや女性の下着が散らばっていた。二人がどれほど急いでいたかが伺える。

寝室のドアには、引き裂かれた赤いナイトウェアが落ちていて、「やっぱり」と、友梨の心は虚しさに包まれた。

玄関から寝室まではわずか数メートルだったが、友梨にとっては、体力を使い果たすほど長く感じられた。寝室のドアの前に立ったときに浮遊感を感じた。

彼女は震える手でそっと半開きのドアを押す。

乱れたベッド、一糸まとわぬ男女、荒い息遣いが淫靡な光景を織り出し、友梨の目に鋭く突き刺さった。

二人は夢中になっていて、ドアのそばに立っている彼女に全く気づかなかった。

友梨はドアの枠に手をついた。強く握りしめたせいで青白くなっている掌には赤い痕が残っていた。

彼女と健は付き合ってもう8年だ。学生時代から結婚までずっと一緒で、周囲の友人たちが羨むようなカップルだった。

今日まで、彼女は裏切りという言葉が自分たちの間に現れるとは考えもしなかった。

しかし今、現実は彼女に容赦なく衝撃を与えた。

結局、どんなに完璧で真剣な結婚の誓いも、人の心の変わりやすさには勝てない。

気持ち悪くなり、耐えきれなくなった友梨は、ふらふらと門に向かって走り、そのま

ま車に乗り込んで走り去った。

街角のバーの前を通りかかる時、友梨は車を止めて中に入った。

平野さくらが到着したとき、彼女はすでにウイスキーを2本飲んでいて、目が少しうつろだった。

「さくら、来たのね」

4、5人のホストに囲まれている友梨を見た時、さくらは眉をひそめた。

「あなたたちは先に出て行って」

「やだよ、みんなここにいてくれなくっちゃ…」

「みんな出て行け!」

ホストたちを追い出した後、さくらは友梨の隣に座った。「一体どうしたの?!健は本当に浮気したの?!」

さくらは友梨の大学時代のルームメイトであり、健と友梨が学生時代から結婚に至るまでを見守ってきた証人でもあった。

これまで、健が友梨を大切にしてきたことをよく知っていたから、友梨から健が浮気したと聞いたときの彼女の最初の反応は「何かの誤解ではないか」だった。

健の名前を聞くと、友梨の目が暗くなり、あの胸を引き裂くような痛みが再び押し寄せてきた。

「今はその名前を聞きたくないの」

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status