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第3話

帰り道、友梨はしばらく迷った末に、3年間連絡を取っていなかった幸四郎にメッセージを送った。

「叔父さん……今夜のことはなかったことにしてもらえませんか。本当に酔っていて、部屋を間違えただけなんです」

しかし、いくら待っても幸四郎からの返信はなかった。

友梨は眉をひそめ、もう一度メッセージを送った。

「?」

しかし、メッセージを送信すると、画面に赤いビックリマークが表示された。

「相手が友達認証をオンにしました。あなたはこのユーザーの友達ではありません……」

友梨は唇を噛みしめ、自分の連絡先を削除したということは、この話はここまでだという意味だろう。

そう考え、友梨はやっとほっとした。

家に帰ると、すでに朝の6時過ぎだった。

ドアを開けた途端、健がソファに座っているのが見えた。

ドアの開く音を聞くと、彼は急に振り向いた。その目は真っ赤で、明らかに一晩中寝ていないようだった。

「友梨、昨夜どこに行った?」「十何回も電話したのに、どうして出なかった?」

健は立ち上がり、友梨に近づいて手を握ろうとしたが、避けられた。

彼は呆然として話そうとしたが、友梨は淡々と言った。「あなたは一晩中帰らなくてもいいけど、私はダメなの?」

友梨の性格はとても優しく、二人は8年間一緒に過ごしてきたが、ほとんど口喧嘩をしたことがなかった。彼女がこんなに冷たい口調で彼に話すのは初めてだ。

彼女の不安定な様子に気づき、健の目は少し赤くなり、横に下げていた手をゆっくりと握りしめた。

「もう知っていたのか?」

健は冷静で、まったく慌てる様子もなかった。まるでこんな日が来ることをすでに予想していたかのようだった。

彼の全く罪悪感のない様子に、友梨がずっと抑えていた感情はついに爆発した。

彼女は急にかばんを健に投げて、真っ赤な目はまるで狂人のように見えた。

自分に対して示した優しさや、二人で過ごした幸せな記憶は、昨晩彼が別の女性と一緒に寝ているのを見た瞬間に引き裂かれ、二度と元には戻らなかった。

「どうしてこんなひどいことするの?!」「もし私を愛していないなら、離婚すればいいのに、なんでこんなことするの?!」

友梨は、彼らの間に第三者が現れることは決してないと思っていたが、現実は彼女をひどく打ちのめしてしまった。

健の行為により、彼女は作り上げられた夢から目覚め、彼に対して抱いていた未だに激しい愛意はばかげたものに変わってしまった。

友梨の真っ赤な目を見ると、健の心が一瞬締め付けられ、彼女の手を引き寄せて自分の胸に抱き寄せた。

「友梨、ごめん……」

友梨は彼を一撃で押しのけて笑おうとしたが、涙は止まることなく流れ続けた。

「そんな汚い手で触らないで!」

「そんなことをしないのがそんなに難しいの?」

「あなたと結婚してから、いい男に出会わなかったわけではないし、好意を持たれたこともある。でも、私は一度も一線を越えたことはない。私はできたのに、どうしてあなたはできないの?」

彼女の目に映る失望と怒りを見て、健は拳を握りしめた。

「友梨、僕が愛しているのは君だけだよ……彼女とのことは本当に一時の過ちだった……」

健の説明には全く意味がなく、友梨はそれを聞いてばかばかしく感じ、ますます気分は悪くなった。

「もしあなたの言う通りなら、私も他の男性と一緒にベッドに寝て、それをただの過ちだと言ってもいいってことよね。浮気はただ身体だけで、あなたを心から愛している、そういうことでしょう?」

健の目には冷やかで残酷な光が一瞬閃き、一字一句をしっかりと言った。「もしそれをやるというのなら、君とその男を一緒に殺す」

その冷たい目を合わせると、友梨の心はただ冷えてしまった。

彼も裏切りが許されないことだとは知っていたが、それでも彼は彼女を裏切った。

友梨は深く息を吸い込み、ゆっくりと言った。「あなたがプロポーズしたとき、私が言ったことまだ覚えてる?」

もし彼がいつか彼女を裏切ったら、彼女は許さず、そのまま彼を離れるだろう。

健の顔色が変わり、「お前を離すわけがない!」と言った。

友梨は目尻の涙を拭い、嘲笑の表情を浮かべ、少しの憎しみを混ぜて彼を見た。「あなたが同意しようがしまいが、私はもう決めた。あなたと離婚する。あなたは私に許される価値がない」

すると、健の反応も気にせず、友梨は彼を越えて階段を上った。

健は彼女の背中をじっと見つめた、目の奥には陰鬱な色が浮かんでいた。

寝室に戻ると、友梨はそのまま浴室に行く、全身に漂う酒の匂いが耐えられなかった。

ボディソープを体に塗っていると、自分の胸にある赤い跡を見つけ、思わず動きを止めた。

頭の中に無意識に男が自分の身体を触れる記憶が浮かび上がると、友梨は思わず眉をひそめた。タオルで何度か拭き、肌が赤くなるまでやめなかった。

そうすることで、その跡を消せるかのように思えた。

シャワーを終えて浴室から出ると、健がベッドに座っていた。頭を下げていて何を考えているのか分からなかったが、友梨は眉をひそめ、彼を見なかったことにした。

どうせ、もうすぐ彼らは離婚することになる。

足音を聞いて、健は顔を上げ、友梨が身体にバスタオルを巻いたままで出てくるのを見た。

濡れた髪が背中に垂れ下がり、まだ水が滴り落ちている。頬は水気で赤く染まり、まるで摘まれるのを待つばかりのほころびたバラのようで、魅惑的な香りを漂わせている。バスタオルはぎりぎり臀部を覆い、その下の長く白い足がちらりと見え、人の心を揺さぶる。

健の呼吸は突然重くなった。視線はしっかりと貼り付き、少しも逸らすことができない。

友梨は彼の変化に気づかった。クローゼットの前でナイトウェアを取り出そうとしたところ、突然、背後から抱きしめられてしまった。

「友梨……」

彼の声はかすれていて、隠しきれない情欲が含まれていた。

実は先ほど下の階で、友梨が去った後、健は彼女の心を取り戻す方法を考えていた。

すると、彼女と子供を産む、という唯一の方法が頭に浮かんだ。

彼は上に上がって彼女とこの話をするつもりだったが、友梨が入浴から出た瞬間を見て、急に自分の気持ちを抑えきれなくなった。

以前の健なら彼女を惹きつけていたが、友梨は今、ただ気持ち悪いと感じていた。

友梨は身をかえし彼を押しのける、目は嫌悪の色で満ちていた。

「触らないで、気持ち悪い」

健の目には痛みの色が閃き、彼女の手をしっかりと握り、真剣な顔で言った。「君はずっと子供が欲しかったんじゃないか?」「今すぐ子供を作ろう、どう?」

彼の当たり前のような態度に、友梨は彼を振り払った。

「それは昔の話よ。将来子どもを持ったとしても、あなたの子じゃないわ」

この言葉で健は激怒した。彼は友梨の手を強く掴み、ベッドに投げ飛ばし、自らも友梨の上に押し倒した。

「もう一度言ってみろ!」

健の目には怒りがあふれていたが、友梨は全く気にしていなかった。

「何回言っても同じよ。今のあなたを見るだけで気持ち悪い。あなたの子供を産むくなら死んだほうがいい」

その言葉が終わるやいなや、健に激しくキスされた。

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