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第2話

タクシーに乗って会社に向かう。

母は私を見て、一瞬驚いたようだった。

目の前に母が生き生きと立っているのを見て、私は鼻の奥がツンとした。そして彼女を抱きしめた。

母は仕事ではバリバリのキャリアウーマンだ。

外祖父が亡くなってから、母は一人で家業を引き継ぎ、会社を経営していた。

父は正業を持たず遊び呆けているだけで、私たちの面倒も見ない。

母は仕事に追われながらも、細やかに私と拓実の世話してくれて、決して文句を言わなかった。

そんな母が、前世では父と小林小林優子に陥れられ命を落としたのだ。

そのことを思い出すと胸が張り裂けそうになる。

母は私の傷ついた足を見て何か言おうとしたが、その時彼女の携帯が鳴った。

私は嫌な予感がして、母の手から先に携帯を奪い取った。

案の定小林優子からだった。

私は電話を切り、この番号を着信拒否リストに登録した。

父は拓実をひどくかわいがり、私には全く関心を持っていなかった。

小林優子もそのことを知っていて、学校で拓実にばかり関心を払って私には嫌がらせをしてきた。

彼女の狙いは明らかだった。私を利用して母に嫌がらせをしようとしていたのだ。

この世では、母を守り抜く。絶対に前世のような運命は辿らせない。

私は深く息を吸い、母に向き合って真剣に言った。

「お母さん、父さん浮気してるよ」

母の目には少しだけ悲しみが浮かんだが、特に驚いた様子はなかった。

「証拠を集めて、父さんと離婚しよう」

母は一言だけ返した。

「うん」

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