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第4話

「安彦、部長になったからって、自分が何者か忘れたの?」

親友が急いで私を助け起こし、腫れ上がった私の顔を確認した。

私は軽く彼女の震える手を叩き、大丈夫だと示した。

顔の傷は、少なくとも見えるものだ。

でも心の傷は、目に見えない。

幸い、私は彼に対してとっくに諦めていた。

「安彦、離婚しましょう」私は自嘲気味に笑った。

あなたに自由を与えるわ。あの『妹』さんと一緒になれるように」

安彦の目は、探るような、疑うような、そして最後には信じられないような表情に変わった。

彼は拳を握りしめた。

「さっきは冷静さを失ってしまった。遥、この7年間の愛情を、まだ信じていないのか?」

私は首を横に振った。

「二人の夫婦の問題は、会社ではすぐには解決できないわ。まずは家に帰って話し合ったらどう?」

親友が私と安彦を押しながら、帰るよう促した。

彼女の言葉を安彦は聞き入れたようで、何も言わずに私の手を取って歩き出した。

私は横目で、菜々実が付いてこようとしたところを親友に阻まれるのを見た。

後ろから菜々実の悲痛な叫び声が聞こえた。

「安彦お兄ちゃん......」

でも私も安彦も振り返らなかった。

道中は沈黙が続いた。

家に戻ると。

もともと火傷の傷跡があった私の顔は、今や血の跡と腫れで人相が変わっていた。

安彦は珍しく製氷機で氷を作り、タオルで包んで私の顔を冷やした。

すべての処置が終わり、夜も更けた頃、彼は突然私を引っ張って私の寝室に入った。

「遥、離婚はやめよう。さっきは俺が悪かった。誤解していたんだ。子供を作ろう」

安彦はそう言うと、熱っぽい目で私を見つめた。

私たちが結婚証明書を受け取って以来、同じベッドで過ごすことはほとんどなかった。

私が彼に親密になろうとするたびに、彼はうんざりした様子を見せた。

一緒に体を重ねる時も、彼は何の工夫もなく、まるで義務を果たすかのように早々に終わらせるか、あるいは手で私に触れることすらなかった。

最後にライトをつける時には、タバコを吸いながら、私の体の火傷の跡を見て気持ち悪いとまで言った。

「あなたはずっと、私の傷跡に触れても感触がないって思ってたんじゃない?」

私は服を脱ぎ、最もひどい火傷の跡がある肩を露出させ、目を伏せて皮肉を込めて言った。

「こんなに恥知らずなの?子供が欲し
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