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第10話

「安彦お兄ちゃん、何を怖がってるの?もう4年も経ったのよ」

そう言って、菜々実はくすくすと笑い出した。

「遥お姉さん、知らないでしょう?あの時の火事は彼が仕組んだものなのよ。あなたを騙して彼を助けに行かせるためだったの。

あの時、火はとても大きかった。私たちは既に裏口から出ていたのに、まさかあなたが本当に何も持たずに飛び込んでくるなんて思わなかったわ。

あなたが気絶していて良かったわ。もし中でもう少し歩いていたら、誰もいないことに気づいて、生きて出てこられなかったかもしれないわ」

菜々実の言葉に、私の血液が一瞬凍りついたような気がした。

だから火事の後、病院で安彦が追及しないようにと言い続けていたのか。真相はここにあったのだ。

私はずっと安彦が私に愛情を失っただけだと思っていた。まさか、もっと早い段階で私の命を狙っていたなんて。

「安彦、3年間の恋愛で、私はあなたに尽くしたつもりよ。どうしてこんなことをしたの」

私は彼を見つめ、疑問をぶつけた。

「まだわからないの?安彦お兄ちゃんは最初からあなたの会社を狙っていたのよ。まさか最後に本気になって、自分も巻き込まれるとは思わなかったんでしょうね」

「遥、説明させてくれ......」

「何を説明するの?安彦お兄ちゃん、忘れたの?あの時、よく遥は仕事しか見えてないって言ってたじゃない。彼女の翼を折って、檻の中に閉じ込めれば、彼女の目にはあなたしか映らなくなるって。

安彦お兄ちゃん、私は負けたかもしれない。でも、あなたも勝ってはいないわ。私を選ばないなら、彼女ともやり直せないでしょう」

菜々実はそう言い終えると、私を深く見つめ、背を向けて去っていった。

私と安彦だけが残された。

彼女は本当に、私の結婚から離婚まで、ずっと邪魔し続けたのだ。

「遥、認めるよ。最初は確かに君の会社を手に入れようと思っていた。でも、その後君が家で療養している時も、何も言わなかっただろう。ほら、もし本当に会社を乗っ取るつもりだったら、とっくにやっているはずだ。なぜ今まで待つ必要があったんだ?

あの時は本当に君を失うのが怖かったんだ」

安彦はそう言いながら、実際には存在しない涙を拭った。

「中島さん、これらのことはもう過去のことです。どんなに取り繕っても変えることはできません。だから、あなたの過去の責任を追及するつ
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