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第2話

中島安彦は急いで出て行き、私に説明する時間さえ与えてくれなかった。

私は一人で家の中で静かに自分の傷の手当てをした。

ガーゼを貼り終わる前に、携帯が鳴った。

「遥ちゃん、あなたの旦那さんの『いい妹』の動画アカウント見つけちゃった!

本当に仲良し兄妹ね。内容がべたべたで見てられないわ。早く見てみなさいよ。これを見ても我慢できるはずないわ」

共有されたアカウントのピン留め動画は【7周年】というタイトルだった。

偶然にも、その動画の場所は私が7周年記念日のために予約したレストランだった。

動画の下で、私は夫の安彦と彼女のやり取りを見つけた。

【菜々実ちゃん、民は食をもって天となす。僕は君を第一に考えるよ】

【安彦お兄ちゃんのおごりで豪華ディナー~。本当はダイエット中だったのに、お兄ちゃんがいると全然痩せられないわ~】

コメント欄は真相を知らない人たちの「末永くお幸せに」の祝福で溢れていた。

でも、私はこれらを見て胸が悪くなった。

動画の投稿日は2日前だった。

はっきりと覚えている。あの日は私と安彦の7周年記念日だったのだ。

私は1週間前からわざわざレストランを予約していた。

安彦はそれを知ると、顔をしかめた。

「食べる食べるって、お前は毎日食べること以外に何を覚えてるんだ?

今のその醜い姿で、よくもレストランに行こうなんて言えるな」

その時は気にしなかった。

でも7周年当日、私は突然胃の調子を崩し、外食の計画はお流れになった。

今思えば、安彦が帰宅時に温かいおかゆを持ち帰ってくれたのも納得だ。

文田菜々実も薬を入れたお茶を淹れてくれて、体調に気をつけるよう言ってくれた。

結局、私の出費で二人が7周年を過ごしたというわけだ。

菜々実のアカウントでは、ほぼすべての動画の下に安彦の気遣いのコメントがあった。

ふと、菜々実と初めて会った時のことを思い出した。彼女が高飛車に私に言った言葉が。

「遥姉さん、なぜあなたのことを姉さんと呼ぶけど、お義姉さんとは呼ばないか分かる?

「それはね、あなたが安彦お兄ちゃんにふさわしくないからよ」

「私が安彦にふさわしくないなら、誰がふさわしいと思うの?」

当時は彼女の言葉を笑い飛ばしただけだった。

でも彼女は自分を指差した。

「あなたは安彦お兄ちゃんの奥さんの座を占めているだけ。私こそが彼の心の中で一番大切な人なの。

信じられない?じゃあ、証明してあげる」

菜々実は挑発的に笑うと、振り返って安彦の腕を軽く揺すった。

「安彦お兄ちゃん、遥姉さんが......」

彼女は言葉を最後まで言わなかった。

安彦は私に一言も聞くこともなく、すぐに怒り出した。

「何度言えばわかるんだ。菜々実は妹みたいなものだって!

俺と菜々実はずっと前から知り合いで、お互い家族同然なんだ。子供に対してそんな悪意を持つなよ」

彼がその後何を言ったのか、私には聞こえなかった。

ただ、安彦の背後で菜々実が嘲笑と同情の眼差しを向けているのが見えた。

それ以来何年も、私はこの出来事を忘れたふりをしてきた。

でも問題が起きるたび、安彦の前で菜々実が常に私より優先されるたび。

この記憶が何度も心に浮かび、刺のように深く刺さっていった。

【遥姉さん、安彦お兄ちゃんと離婚して!もう十分でしょ。そろそろ彼を私に返してよ】

菜々実からのこのメッセージが、最後の一押しとなった。

安彦には私への愛情などない。

この7年間で、彼は私の愛情を徐々に摩耗させてきた。

もう疲れ果てた。私が二人の間から消えて、彼らが本当の家族になれば、それでいいんじゃないだろうか。

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