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第5話

「放せ!どうせ俺の注意を引こうとするくだらない茶番だろう!お前が刑事だってのに、こんなこと信じるなんて、馬鹿げてるだろ!仮に何かあったとしても、全部あいつが悪いんだ!」

兄は必死にもがいていたが、桜井警官の体はがっしりとしていて、その力を振りほどくことができなかった。

「頼む、形式的でいいから調べてくれないか? 朱理ちゃんの携帯からかかってきたんだ。お前だって警察で長年働いてるんだから、法律的に協力する義務くらい分かるだろ!」

私はその様子を見ながら心が締めつけられるようだった。

違うんだよ、お兄ちゃん。

あの時、囚われてた時に、目の前であいつがスマホを壊したんだ。今かけてきてるのは、私じゃない。だって、私はもう......死んでるから......

二人がオフィスに入ると、電話の泣き声がどんどん大きくなっていた。不気味で震えるような声だった。

近くにいた警官が思わず身震いした。

「なんか......聞いてると寒気がするよな......」

「朱理ちゃん、危険な目に遭ってるのか? 答えてくれ!」桜井警官が焦りながら声を張り上げるが、電話の向こうからは依然として泣き声が続くだけだった。

「くだらない」

兄は冷たく鼻を鳴らし、その隙に力を込めて桜井警官を振り払った。だが、桜井警官は再び兄の腕を掴んだ。「もう少し待て。今、朱理ちゃんの携帯を特定しようとしてるんだ......」

「もういい加減にしろ!」

限界に達した兄は、ついに桜井警官に拳を見舞った。「そんなにあいつが心配なら、お前が勝手に探せばいいだろ! いっそ結婚でもしろ! 俺には関係ねぇ! 焦げ死体事件を解決させたいなら、あいつのことなんかでもう俺を巻き込むな!」

兄は激怒しながら叫んだ。桜井警官は驚いた表情で顔を押さえ、兄を見つめていたが、その目つきがだんだんと変わっていった。

その時、電話の泣き声が突然止まった。同時に、誰かが叫んだ。「場所が特定できました!」

「どこだ!」

桜井警官は急いでパソコンに駆け寄った。「えっと......」警官は言葉を濁しながら、画面上で点滅している赤い点を指さした。「このビルの下です」

桜井警官の顔色が一気に青ざめた。「確認しよう」

兄は冷笑を浮かべながらその後をついていった。その瞬間、兄の中には、私をどれだけ悪質な人間として証明するんだっていう気持
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