使うのは薄野のカードだった。自分のお金は…ホテルに払う必要はない。 中村に電話を掛け、彼女が家にいたことを確認したら、すぐ向かいに行った。 入江さんの車がずっと後ろについているが、それを無視。 着いた後、荷物を運ぶ時手が不意に傷ついた。 血が出たが、ひどい傷じゃなかった。 中村の家は17階にある。彼女が来ることを知っていたので、事前にドアは開いていた。 荷物を持って入った瀬川を見て、中村はびっくりした。荷物を持ってくるって電話で言わなかったが。 どうやら家出だね。 マスクをすることもできず、瀬川に手を貸そうとしている。 「どうして言わなかったの?荷物を持ってること。迎えに行く
車はずっと静かで、緊張した雰囲気のため、入江さんは運転中にスピードを変えるのも怖かった。 車が郊外の別荘の駐車場に到着して初めて、彼は大きく息をつき、車を降りてドアを開けた。 瀬川は薄野と違って人に使えられるのを好まなかったが、ドアを開けようとしたとき、薄野は突然話した。「俺は巨乳のバカ女が好きだと?」「…」瀬川はむせたところだった。彼が言わなければ、彼女は忘れていただろう。彼を誹謗するためにそういったから。一体何か好きなのか知るかよ。頭を後ろに回して、薄野の視線が彼女の鎖骨の真下に落ちるのを見た。なんだか、意味深い目線だ。瀬川はこの目線を嫌悪感として理解している。「男は誰でも巨
瀬川は薄野の言葉のどこがおかしいのか気づかず、彼の冷淡さと無情さに腹を立てている。「チッ!」薄野はスープを一気飲みしたが、碗をテーブル置くときに少し力強すぎた。「バン」と音が出また。それから布団を持ち上げて横になった。一方瀬川は彼に背を向け、ランプを消し、目を閉じて寝ろうとしている。この一年間たまに同じベットで寝ることがあっても、2人が横になるほどの間隔をあける。でも今夜はちょっと違う…昔のように広い間隔を開けているが、男は急に彼女に近づいて、腕に抱かれそうになった。薄い布地を通して彼の筋肉の感触をはっきりと感じた。男の荒い息遣いが耳元に迫り、部屋の温度が沸騰するほど熱くなった。
瀬川はわざとそうした。男の気を取るためだ。薄野の喉仏は上下に転がり、電話を持つ手に力が入り、指の関節が膨らんだ。相手側の声が再び聞こえてきた。「薄野様、唯寧の足が折れたら、ダンスキャリアは終わってしまいます。当時、薄野様の身分に釣り合う国際的に有名なダンサーに日日も早くなるため、ずいぶん苦しんだんです。今では毎週理学療法に行かなければなりません。」薄野は唇をすぼめてベッドから降りた。「彼女を見守って。すぐに行く。」瀬川は彼を止めなかった。止めることもできないし、自分に恥をかかせる必要はない。薄野を奪い返したくなかったが…気を晴らすために、松本の機嫌をちょっと悪くしただけ。薄野は妻で
「降りろ!」ここは幹線道路なので、タクシーをひろうのがとても便利だ。彼が松本に会うために病院に急いでいるのだと推測した。二人のろけるのを見るのはごめんだ。ためらうことなく、頭を高く上げて車から出た。車のけたたましい轟音とともに、舞い上がった砂埃が顔に直撃した。瀬川は走っていった車に向かって叫んだ。「あの女は死んだから一秒も待ちきれないの」その叫びに答えるのはただ静かだった。その後、瀬川は道端に立ってタクシーをひろおうとしているが、黒いベントレーが彼女の前で止まった。江さんは車から降りて、うやうやしく話した。「薄様からは、奥様を連れ戻すよう言いつけました」瀬川は薄野が言いたいこと
瀬川は薄野が来るのを待つのは絶対に不可能だ。でも男のスピードを見くびった。玄関まで歩いてきたところで、向こう側から歩み寄ってきた男の姿が見えた。薄野はスリムなカットの黒いシャツにスーツのズボンをはいており、ハンサムな外見と高貴な気質で、高ぶっている。顔がいいし、気性もいい、それに若くて金持ち......。もし浮気しないと、薄野は間違いなくいい男だ。傍に田中がついているが、彼の気迫は薄野のに比べ物にならない。瀬川が呆然としている数秒の間に、薄野はすでに彼女の前に立った。彼は眉をひそめた。「江さんから聞いた。昨日は家に戻っていなかったって?」これを聞くために来たのか?「入江さんは伝え
瀬川はあきれた。「好きな人と結婚して3年間、ずっとセックスしない?そういう人本当に存在しているの?」中村もそれに同意した。「だよね。でも、どうしてそんなにしつこくあなたに戻ってほしいの?どうせ、三か月後は正式に離婚するのに」瀬川はも理由を知らないし、詮索する気もなかった。夕食は結局、外で鍋を食べた。瀬川は、激辛の鍋を注文し、大汗をかいてすっきりした。この夜、瀬川は、薄野がまた何か仕業をすることを心配してて、携帯の電源を切った。翌日、朝早く起きて、荷物を車に乗せ、借家に向かった。そして服を整え、これからの仕事場に行った。京元事務所。許さんはここの責任者で、今年60歳を過ぎ、あま
騒がしく賑わっている屋台には、人間味が溢れていた。瀬川秋辞はヘアクリップで巻き髪を簡単にまとめて、頭を下げる時に、垂れ下がった髪の毛が、横顔の一部を覆ってしまった。その白い肌がいっそう美しく見えてきた。彼女はメニューを指差して、首を傾げて隣の男性に何か言ったようだった。男が頷いたら、瀬川秋辞は微笑んで手を振りながら、ウェイターを呼んだ。「君と別れて、奥さんは一人でもけっこう楽しそうだね!」上野忱晔は眉をあげて言った。薄野荊州は何も言わずに背を向けて個室を出ていった…屋台でビールを一気に飲み干した黒崎白は「本当に秋音さんですか?そのぶっ壊れた元青の花瓶さえも完璧に修復できた、あの秋音