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第 0004 話

使うのは薄野のカードだった。自分のお金は…ホテルに払う必要はない。

中村に電話を掛け、彼女が家にいたことを確認したら、すぐ向かいに行った。

入江さんの車がずっと後ろについているが、それを無視。

着いた後、荷物を運ぶ時手が不意に傷ついた。

血が出たが、ひどい傷じゃなかった。

中村の家は17階にある。彼女が来ることを知っていたので、事前にドアは開いていた。

荷物を持って入った瀬川を見て、中村はびっくりした。荷物を持ってくるって電話で言わなかったが。

どうやら家出だね。

マスクをすることもできず、瀬川に手を貸そうとしている。

「どうして言わなかったの?荷物を持ってること。迎えに行くべきだった…あら、手も傷ついたし」

慌てて包帯を探しに行く中村を止めた。「大丈夫だよ、ひどい傷じゃないし」

「ピアノリストのようにこの手を大事にしなきゃ!」

その話で思わず笑うようになった。機嫌もよくなってきた。「こんなぐらいの傷では、大丈夫よ」

手の話に触れたら、中村はこの前のことにまでまた言い及んでだ。「そうだ、この前言ってたこと、どう考えたんだ?」

瀬川は沈黙している。自分はまだ決まっていない。

「許さんは私に何回聞いたんだよ。国内有数の文化財修復研究院だわ。そのチャンスを把握しなきゃ! あなたが身元を明かしたがらなかったから、ずっと連絡先を許さんに教えてなかった!」

瀬川は文化財修復士で、結構腕がある。

母に従って勉強して育ち、技術は唯一無二で、大学もこの専攻であった。もともと卒業後、博物館の仕事に入ることに決めたが、それらのことにあったから、薄野と結婚しなければならなかった。

この数年、中村を通じて、民間の仕事を取ることができるだけで、民間の修復士をしている。

でも今は違う。離婚するし、新しい1ページを開こう。

そう思ってて、瀬川はうなずいた。「分かった。許さんの誘いを受けるわ」

「本当に?」中村もこんなに突然だとは思っていなかった。以前はこの話が出るたびに、瀬川は断っていた。

「やってみよう。いつでも仕事を始められる」

「いつでも?」中村はまたびっくりした。「薄野氏グループでの仕事をやめたの?」

「うん、やめた」

瀬川はまるで他人のことを言っているような顔をしている。

「チッ!」今朝のニュースを思い浮かんでた。

「ずっと前に離婚すべきだった。薄野の浮気者。注文してくれた料理を食べないのに、毎回あなたに注文させる。ムカつく!」

一晩中、いろんなことがあって、瀬川はちょっと疲れてた。

「離婚って言ってたが彼は同意しない。期限が切れるまでって」

「あきれたわ。当時松本が彼のプロポーズを断って、海外に行った。今松本が帰国したばかりだ。すぐに彼女と復縁すると、メンツは失う。だから、簡単に離婚するわけがないよ!」

瀬川はこのことを考えたことはなかったが、中村の話を聞くと、完全に分かってきた。

メンツを立てるためか。

「私に言うと、メンツなんてどうでもいいよ。離婚する前にいっそ結婚届をsnsに披露して、浮気者と浮気相手をばらしようよ!」

瀬川は頭を振った。それはいいアイデアじゃなかった。

「そのまま放っておけ。バラした後、もし手に負えなくなったら、損するのは私なんだ。将来の恋愛相手にも不公平だから」

将来の恋愛相手?どうやら離婚することを決めたね。

めでたいことだ!

中村は冷蔵庫からビール一箱を取り出して、瓶を開けて彼女に手渡しした。「離婚、おめでとう!」

ビールを受けようとしたところ、ベルが鳴った。

「誰だよ?」中村は呟いながらドアを開いた。

外で立ったのは入入江さん。さっきの平然な態度と違って、苦々しい顔をしている。「奥様、薄野様が下で待っていますので、降りていただけますでしょうか?」

瀬川は眉をひそめて、怒りを抑えている。「待つことが好きなら、ゆっくりと待てばいい」

言いなりになるもんか!

そういって、一口でビールを飲み終えた。

瀬川の話、入江さんはそのまま伝えるわけがない。

仕方がない。入江さんはまた言う。「さっき車で、夫人が薄野様に電話をかけました。具合が悪いと…」

話は終わっていないところ、瀬川の携帯が鳴った。他の人じゃない、薄野の母の江雅子(え まさこ)だった。

薄野の電話を無視することができるが、母の雅子の電話に出ないわけにはいかない。

結婚して三年間、彼女に対して薄野の息子より優しくしていた。いいものがあるなら、きっと彼女にあげるし、薄野と喧嘩するたびに、理由はどうであれ、母に叱られたのはいつも薄野の方だった。

「お母さん…」

「秋辞、さっき荊州に電話をかけたんだが、君が傍にいないって。このクソガキがまた家に帰ってこないかしら?」

この世には、薄野をそう呼ぶのは多分お母さんだけかも。毎回電話をかけてくれるたびに、家に帰ったかどうかを聞いている。

「違うわ。今夜は友達の家にいる、友達の誕生日だから」

お母さんに気に障らないよう、離婚のことは言わなかった。

薄野を出産したときに出血し、後遺症を残したから。

「誕生日」になった中村は、親友が表情も変えずに嘘をついてる様子を見て、白目をむいた。

「誕生日パーティーが終わったら、屋敷に戻ろう。お父さんが出張したし、具合はちょっと…」と雅子は言った。

瀬川は体を心配していた。「どこが具合悪いの?医者に

見てもらったか?」

「そんなひどくないわ。ただ、この前オークションで翡翠のかけらを買ったんだ。ドラえもんの様子を作らせたの。気に入るかどうか実見しないと分からないから。若い人はブレスレットとか好きじゃし」

2秒ほど黙ってから、「分かった」と瀬川は答えた。

ただ戻って何かを取りに行かせるなら、彼女は断るだろう。何しろ薄野と離婚しようとしていたのだから。でもお母さんが具合悪いと言ってた。

瀬川を食い止められないと知って、団地の入口まで送った。「姑さんはきっとわざとそう言ったの」

その見慣れた車は、探知の入口の前に駐車し、薄野はタバコを吸って車のドアにもたれている。何か音を聞いて、目を見上げた。その黒い瞳に......

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