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第 0005 話

車はずっと静かで、緊張した雰囲気のため、入江さんは運転中にスピードを変えるのも怖かった。

車が郊外の別荘の駐車場に到着して初めて、彼は大きく息をつき、車を降りてドアを開けた。

瀬川は薄野と違って人に使えられるのを好まなかったが、ドアを開けようとしたとき、薄野は突然話した。「俺は巨乳のバカ女が好きだと?」

「…」

瀬川はむせたところだった。彼が言わなければ、彼女は忘れていただろう。彼を誹謗するためにそういったから。一体何か好きなのか知るかよ。

頭を後ろに回して、薄野の視線が彼女の鎖骨の真下に落ちるのを見た。なんだか、意味深い目線だ。

瀬川はこの目線を嫌悪感として理解している。

「男は誰でも巨乳を好きじゃないの?」

だから結婚して3年間、彼女に対して性欲とか全くなかったわけ。でも簡唯寧(かん/ゆう/ねい)も巨乳じゃないし。

薄野はと顔をしかめた。「俺は気に入らない」

瀬川は微笑んだ。微笑みには攻撃的な美しさを持っている。普通の男ならきっと彼女に魂を奪われるだろうが、薄野は平然と彼女を見つめている。

「あなたが好むかどうかは私には関係ないが、私は大きくて機能もいいのを好きだわ。これがあなたと離婚した主な理由だ」と瀬川は話した。

薄野の顔は瞬時に崩れ、車内の雰囲気は目に見える速さで冷たくなった。

車の防音効果は良くないので、車の外に立っている江さんは二人の対話を聞いた。一瞬間、額に冷や汗をかいた。薄野が怒る前に慌てて車のドアを開けた。

「薄野様、奥様、着きました」

先に車から降りた瀬川が優しい笑みを浮かべて別荘から出てくる雅子を見た。瀬川の手をとって家の中に入った、「秋ちゃん、王おばさんにツバメの巣のスープを煮込んでもらった。それに肌にいい漢方薬も入れたわ」

車に座っている薄野は完全に無視された。

部屋に入ると、雅子は低い声で尋ねた。「あのクソガキがあなたをいじめたか?」

昨日のニュースを見て、瀬川が悲しくなるのではないかと心配したので、二人に戻ってきてほしいと電話でそう言った。

「お母さん、彼と私…」

二人が離婚することを言いたかったが、雅子に話を遮られた。「いじめられたら、私に言っとくね。お父さんにベルトで打ってもらう!後は彼が好きじゃないものをリストの形で送るわ。明日から一か月間順番に注文して見せろ。私も陳旭(ちん/きょく)に電話して、注文してダメって言いつけるわ」

簡唯寧(かん/ゆう/ねい)のことを全く言及しなかった。これを聞いて瀬川が悲しむのではないかと心配したからだ。

王おばさんはショールを持って二人に向かって歩いた。「夫人、さっき体調が悪かったのに、外出するときにショールを着かなきゃ。自分の体を大事にしてください」

これで、瀬川は離婚のことを言う機会がなかった。

「お母さん、どうしたの?お医者さんには電話したか?」

雅子は手を振って話した。「持病だから大丈夫さ。この屋敷は郊外にあるし、お医者さんに迷惑をかけたくない」

夜遅いから、雅子は瀬川と一緒にスープを飲み、用意しておいたブレスレットを手につけてあげた後、二階に上がって寝た。

立ち去る前に、薄野に厳しい視線を向けた。「今夜晚辞(ばん/じ)に機嫌よくしてあげなさい。じゃないと殺すぞ!」

「……」

戻ってから何も話していないのに、どうして怒られたの?

薄野と瀬川の部屋は2階にあり、彼らが戻ってくることを知って、王おばさんはすでに寝具を交換していた。

瀬川は洗濯の準備のためにパジャマを取りに行ったが、クローゼットを開けると、純綿のパジャマ一がなくなっており、代わりに…セクシーなシルクのパジャマばっかり。それにコスプレ衣装2セットもある。

雅子が孫がほしいってこと屋敷の使用人全員は知っている。薄野が結婚した時から、夫人は赤ちゃんの部屋を準備し始めた。

赤ちゃん用品や服とかたくさん買ってきた。

今、クローゼットにある服も二人は赤ちゃんをできるために用意されているだろう…

瀬川は思わず同情するようになった。二人が過去3年間セックなしの状態にあったことを知ったら、お母さんは薄野を追い出すほど怒るだろう?

振り返って薄野を見てみると、彼もそれらの服を見ている。その目は相変わらず冷たかった。

瀬川を横目で見て話した。「これはあなたには似合わない」

「…」

その中で最もセクシーじゃなかった服を取ろうとしているところ、薄野は自分のシャツを彼女に渡した。「これを着け」

瀬川はそれを受け入れた。彼のシャツは自分の膝まで覆うことができ、セクシーな服よりましだ。そのシャツを持って風呂場に入った。

法律によれば、薄野名義の財産の半分は彼女のものだ。つまり、このシャツは彼女のものになった。

髪を洗って乾かして、風呂場から出てきたとき、薄野はベランダでタバコを吸っている。薄い煙越しで、彼の顔がぼんやりように見え、鋭い顔立ちも柔らかくなった。

それが幻覚だったのかどうかはわからないが、薄野の目が彼女に落ちたとき、急に暗くなった。よく見ると、また元に戻した。

男はタバコの火を消してベランダから入ってき、立ち止まることなく彼女の横を通り過ぎて風呂場に行った。

そんなことはもう慣れたから、心には何の感覚もない。

しばらくして、ノックの音がした。王おばさんがスープ持ってきた。「奥様、薄様のために夫人が自分で作ったのです。薄様に飲んでもらっていいですか。このスープを作るために手に火傷をしました。さっき何も言っていませんが、実は薄様のことを思っていますわ」

「分かった」

お母さんの気持ちにはよく分かっている。なんといっても自分の息子だから、無関心の分けがない。

男はシャワーにあまり時間をかけなかった。風呂場を出たとき、テーブルにあるスープを見た。

「お母さんが自分で作ったんだ、飲んでて」

薄野は何も言わず、飲むつもりもなかった。

そんな姿を見て、瀬川は王おばさんの言葉と…この数年間自分が作った料理を全く食べなかったという悲しい出来事を思い出し、一瞬少しイライラしたように感じた。「あなた、お母さんはスープを作るために、手に火傷さえしたの。お母さんをがっかりさせるつもりか?」

がっかり?薄野から聞いて、なんか別の意味があるようだ。

薄野は彼女を見て、突然薄笑いした。「本当に飲んでほしい?」

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