第6話 偽物のお嬢様が残った

瑠璃は兄の胸に寄り添い声をあげて泣き崩れていた。二人はまるで離れたくない様子だった。

「お兄ちゃん、いつも私を一番可愛がってくれているのはわかってる。私のことを手放したくない気持ちもわかるよ。でも、亜衣姉さんは二十年間も辛い思いをしてきたの。これ以上彼女に苦しんでほしくない。ここを離れる覚悟ができてるの、帰るわ、お兄ちゃん……」

「だめだ、絶対にお前を行かせるわけにはいかない！」兄は断固とした口調で言い、瑠璃をさらに強く抱きしめた。

隣にいる亜衣が明らかに驚いているのがわかった。

素直な亜衣はこんな場面を見たこともないし、瑠璃がこんなに図々しく居座ろうとするとは思いもよらなかっただろう。

瑠璃の哀れな姿を見て両親は同情心を抱いた。何しろ彼女を二十年間育ててきたし、何度も庇っていたので、簡単には手放せない。

「あなた、瑠璃を残してあげよう。うちはお金に困っているわけでもないし、もう一人子供を養っても問題ない……」母は優しく言った。

父も頷いて、「瑠璃、誰もお前を追い出そうとしていない。ここにいて、引き続き娘として過ごしなさい」と言った。

私は拳を握りしめ、歯を食いしばった。

そんなに瑠璃が好きなの？たとえ彼女が実の子供じゃなくても、そこまで庇うの？

「だめよ！亜衣が彼女の代わりに何年も苦労して、何度も殴られてきた。どうして瑠璃がここに居座る権利があるの？」私は怒りを込めて言った。

この時私は自分のためだけでなく、亜衣のためにも声を上げた。

彼女がここに残ろうとするのは、他に何か目的があるに違いない。

「優衣！二十年間一緒に暮らしてきたのに、少しも情がないの？亜衣が彼らと過ごしてきた日々がどんなものだったか、お前だって知っているだろう？瑠璃が戻って、また苦しむことを望んでいるのか？」兄は私を非難するような目で見つめた。

瑠璃は涙をこらえながら、ぼんやりと私を見つめた。「お姉ちゃんの言うとおりだわ、私はここに残るべきじゃない……」

彼女は唇をかみしめ、兄の腕を振りほどいて立ち上がり、出て行こうとした。

「瑠璃！この家は父さんが決めることだ。父さんが残れと言うなら、残りなさい！」父は瑠璃を引き止め、強引に彼女を家に留めた。

私は心の中で大きな不満を抱いていた。しかし、私にできることは何もなかった。

彼らはいつも通り瑠璃を信じ、私の意見など