第22話

「渡辺さん、確かに以前はあなたのことが好きだと言ったけど、ずっと好きだと言ったわけではないでしょう」

「紗希！」

男は彼女の顎をきつく掴み、頭がさがり、彼女を見つめ、この女性が理解できなくなったことに気づいた。

以前、彼女はいつも彼の側にいて、彼の衣食住のすべてを世話し、彼が何を考えているかを瞬時に察知し、反応していたようだった。

彼女の眼差しも分かりやすく、ある種の憧れを含んだ愛情が感じられた。

しかし突然、その眼差しが消えてしまった。

拓海は心の底から不快だった。彼女が他の男にも同じように接していると思うと、殴りたくなった。特にホテルにいたあの男を見つけ出して殴りたかった！

紗希は少しも引かず、二人は近づき、鼻先がほとんど触れそうだった。

二人の呼吸が交錯し、雰囲気が少し奇妙になった。

「あら、二人とも何をしているの？バカな子、紗希は今妊娠しているんだから、気をつけて触らないように」

渡辺おばあさんは長い間待っても二人が戻ってこないので、我慢できずに見に来た。そしたら二人が洗面台の前でキスをしているのを見てしまった。

紗希はおばあさんの言葉を聞いて、顔が急に赤くなった。

拓海は体を横に向けておばあさんを見た。「おばあさん、彼女は妊娠していません」

「このバカ、どうしてそんなことが分かるの？」

「彼女の生理は先日終わったばかりだ」

紗希は彼の言葉を聞いて、驚いて彼の背中を見た。拓海は生理周期を覚えているの？

元々は彼女の生理予定日は数日前だったが、ずっと遅れていた。

彼女はおかしいと感じ、病院で検査をしたところ、本当に妊娠していることが分かった。ただし、まだ妊娠の初期段階だった。

渡辺おばあさんは少し落胆した。「妊娠していないの」

隣にいる美蘭は冷ややかに鼻を鳴らした。「結婚して3年も経つのに妊娠しないなんて、体に問題があるんじゃないの？」

渡辺おばあさんは頷いた。「そうね」

美蘭はすぐに追い打ちをかけた。「そうでしょう。あなたも私の言う通りだと思うだろう。だから、病院に行って検査をして、体に問題がないか見てもらうべきよ」

もし紗希の体に本当に問題があるなら、早く離婚した方がいいかもしれない。

「そうね、このバカ、明日病院に行って、体に異常がないかどうか検査してもらうんだ。3年経っても紗希が妊娠していないなんて、あなた