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第216話

数秒の間に、平野は多くの展開を頭の中で想像し、殺意を覚えるほど怒っていた。

「具体的な理由はわかりませんが、確かに渡辺家の方が建設会社の社長に話をして、紗希さんを狙うよう伝えたそうです。渡辺家は青阪市の名門で、小さな建設会社は顔を立てないわけにはいかなかったのでしょう」

「ふん、拓海のやつ、随分と図々しくなったな。よくも!」

平野は怒りで肺が爆発しそうだった。

拓海のやつはまだ詩織と結婚したがっているし、さらに北に渡辺おばあさんの手術を頼んでいるのに、よくも紗希を狙うなんて!

平野は電話を切ると、すぐに北に電話をかけた。

こんな重要なこと、北と相談しないわけにはいかない。

もし拓海が本当に紗希に別な考えを持っていて、このような卑劣な手段を使っているならば、渡辺家との関係を考え直さなければならない。

この婚約なんて、なくなってもいい。

室内で、紗希は平野が電話をかけるのを待っていたが、彼女の電話が鳴った。

それは見知らぬ番号だった。

紗希は電話に出た。

「もしもし、どちら様ですか?」

「私はとても元気だよ。今の私のこの状況は全部あなたたちのおかげだ。紗希、今どんな気分?やっと立ち退きが来て運命を変えられると思ったのに、がっかりしたでしょう。ははは!」

紗希の表情が冷たくなった。

「奈美、あなたがやったの? いや、あなたにそんな力はない。玲奈がやったんでしょ」

玲奈はバカだが、それでも渡辺家の人で、こんな手を使うのは簡単だろう。

奈美は不気味に笑った。

「玲奈のバカが何を知っているんだ、ただお嬢様の身分を利用して威張っているだけよ。これは全部私がやったの。わざとあなたの養父母を中に入れて署名させ、彼らの銀行口座番号を残させたの。あなたが怒っても、このお金は手に入らないわ!」

「奈美、あなたが良いとは思わない。あなたは玲奈の手先に過ぎない。彼女がいなければ、あなたが建設会社の社長に会いに行っても、相手にしてもらえなかったでしょう。そうそう、あなたならベッドに誘うことができるわね。昔から何度も老人とベッドインをしているんだから、難しくないでしょう」

玲奈のこの言葉に、奈美は電話の向こうで叫んだ。

「紗希、絶対に許さないわ。覚えておきなさい!」

彼女は電話を切った。

この件が本当に玲奈と関係があるとは思わなかった。

渡辺家の人々
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