第217話

紗希は表情を少し固くして、自分の携帯電話を見た。

着信表示には「クソ男」とあった。

彼女は顔を上げ、落ち着いて答えた。

「これは迷惑電話だから、出る必要はない」

平野は眉をしかめた。

「誰がお前を悩ませているんだ？」

もしかして、拓海という再婚男だろうか？

紗希は口元を引き締めて言った。

「あのね、私が最近部屋を買ったばかりだから、リフォーム関係の電話がしつこくかかってくるの」

平野はそれを聞いてようやく頷いた。

そういうことか。

彼は紗希を見つめて言った。

「紗希、誰かに酷い目に遭わされたら、必ず僕に言うんだぞ」

「分かった」

紗希は自分の携帯をマナーモードに設定し、携帯電話には目もくれず、台所に料理をしに行った。

電話の向こう側で、拓海は目の前の携帯画面を凝視していた。

あの女は電話に出ないのか？

さっきメッセージを送ってきたとき、彼女は随分と傲慢じゃなかったか？

彼はそのメッセージの内容を見て、こめかみをさすりながら玲奈に電話をかけた。

向こう側はしばらくして電話に出た。

玲奈の声には注意深さも感じられた。

「拓海兄さん、どうしたの？」

拓海の声は冷たかった。

「玲奈、クレジットカードを止められた教訓では足りないようだな。お前の母親が泣きつかなければ、前回は警察に連れて行かれていたところだぞ」

玲奈は言葉を詰まらせた。

「拓海兄さん、私は最近大人しくしていて、何もしない」

「本当に俺に調べられないと思っているのか？玲奈！」

電話の向こうの玲奈は恐れで体が震えた。

「拓海兄さん、紗希の家が幸運にも立ち退きになったけど、あの家は彼らのものじゃなくて、養父母のものだよ。養父母が家を取り戻したことと私は何の関係もない」

玲奈は自分が全く悪くないと思っていた。

しかも、この件は奈美と紗希の養父母がやったことで、自分とは何の関係もなかった。

拓海の顔顔はかなり暗くなり、「すぐに紗希に謝りに行け。彼女の許しを得るまで」と言った。

「謝らないわ。これらのことは私がやったんじゃない。なぜ私が謝らなきゃいけないの？拓海兄さん、あなたたちは離婚するのに、まだ紗希の味方をするの？もしかして彼女のことが好きになったの？」

拓海の口調は冷たかった。

「謝らないなら、結果は自分で責任を取れ」

「謝らないわ。私を殺せるもの