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第225話

紗希は知り合いを見かけると、振り返って北に手を振った。

「北兄さん、私は仕事に行くわ」

北も自然に、そこにいる男性、風間を見た。

彼はもう一度周りを見渡すと、携帯を取り出して詩織がLINE出の家族グループに投稿した写真を開いた。

「結婚式会場の写真だよ。兄達、何かいい提案があれば出してね。明日の昼、みんな時間通りに来てね」

北は写真を開いてよく見た。

これは今、自分が見ている景色と同じではないか?

もしかして紗希が引き受けた残業が必要な結婚式場の注文が、ここなのか?

なんて偶然だ。

北は少し考えてから、この件を平野兄さんに伝えることにした。

一方、紗希は、先輩の風間について会場の準備に入った。

彼女は設計図のすべてが実現されているのを見て、微笑んだ。

「とてもきれい」

「紗希、やっぱりあなたのセンスがいいね。お客様もとても満足してるよ」

「この花々はとてもきれいだけど、ここにあるものじゃないでしょう?この季節にこんなに鮮やかな花はないはずです」

紗希は最初造花を使う予定だったが、最終的に生花を使うことにしたのが想像以上の効果だったようだ。

「お客様が大京市から空輸してきた花なんだ。これらの花はすべて高価で、しかも花期は2日しか持たない。お金持ちの豪勢さは我々普通の人間には理解できないね」

風間の目には羨望が浮かんでいたが、その奥には野心と期待も隠されていた。

彼は紗希を見下ろして言った。

「紗希、この花が好きなのか?」

紗希は花を見ながら答えた。

「確かにとてもきれいです」

彼女が言い終わるや否や、風間は横からその花の束を取り出した。

「お前にあげるよ、お金持ちさん。将来、僕のスタジオの規模がもう少し大きくなったら、お前にもこんなにたくさんの花を用意するよ」

周りの同僚たちはすぐに囃し始めた。

「答えて、答えて」

紗希が困った様子で、風間にちゃんと説明しようとしたその時、目の端に誰かが入ってくるのを見た。

詩織?

詩織はハイヒールで入ってきて、高慢な様子で周りを見渡し言った。

「ほぼ準備できているようだけど、細かい部分で調整が必要だね」

風間はすぐに花を置いた。

「小林さん、どこを調整いたしましょうか?今回のデザイナーもちょうど来ていますので、すぐにその場で調整いたします」

紗希は、詩織が得意げな表情を
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