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第233話

紗希は少し迷った。

自分が私立病院で渡辺おばあさんを見舞ったために帰りが遅くなったとは言えないと思った。

彼女は落ち着いて答えた。

「道が混んでいたので、タクシーじゃなくて、地下鉄に乗って帰ってきたの」

「タクシーに乗れば渋滞でも座って休めるけど、地下鉄が混んでいて座れずに、万が一押されたりしたらどうするの?」

北は紗希の状態をずっと心配していた。

彼だけが紗希が今妊娠していることを知っていたからだ。

紗希は北が彼女を妊婦として注意を払う必要があると心配していることを悟った。

二人は目を合わせ、お互いの気持ちを理解し合った。

食事を終えて、紗希は嬉しそうだった。

彼女は、家族で一緒にいることが本当に大好きだと気づいた。

将来、赤ちゃんができたら、家はもっと賑やかになるだろう。

ここでの仕事が終わったら、彼女は大京市に戻って子供を産み、そこに定住するつもりだった。

食事の後、しばらくおしゃべりをした後、紗希は思わずあくびをしてしまった。

最近眠くなりがちだった。

北はそれに気づき、すぐに立ち上がって言った。

「もう遅いから、みんな早く休もう」

主に妊娠中の紗希の休みを邪魔したくなかったからだ。

6人の兄達は全員一緒に帰った。

夜に戻ってから詩織のことについて話し合う必要があったからだ。

彼らが去った後、ホールはすぐに静かになった。

伯母は紗希の手を取って言った。

「紗希、立ち退き料が入金されたら、あなたが預かって」

「いや、伯母さんのお金だから、私は受け取れないよ。それに、伯父さんの入院費が必要じゃない」

「あなたのお兄さんがすでに10年分の医療費を払ってくれたでしょう?このお金をもらったら、起業するにせよ、定期預金するにせよ、あなたが管理するんだよ。私は、自分がこのお金の使い方を間違えないか心配なんだ。今、私の実家の人達もこの立ち退き料のことを知って、集まろうと言ってきたのよ」

紗希は伯母の実家の人々の性質をよく知っていた。

以前、伯父が交通事故に遭ってお金が必要だった時、実家の人々は1円も出さなかっただけでなく、伯母に家を売ってお金を取って離婚するよう唆したほどだった。

要するに、伯母の実家の人々もろくな人間ではなかった。

「分かった。お金をお預かりして、将来何か必要な時に渡すね」

紗希は伯母のためにこのお
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