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第240話

「え?詩織姉さんは紗希が結婚式で何かするんじゃないか心配じゃないの?」

詩織は冷たく笑った。

「彼女にそんな勇気はないわ。今日の婚約式の会場は彼女がデザインしたものだから。もし何か問題が起きたら、彼女の仕事もそのスタジオも終わりよ」

「なるほど。詩織姉さん、彼女にウェディングドレスの裾を持たせてみたらどう?あの女に格の違いをはっきり見せつけられるわ」

玲奈は今、紗希を殺してしまいたいほど憎んでいた。

紗希のせいで自分の面目を完全に失ったからだ。

後に渡辺家が出てきて、動画や写真は加工されたものだと主張したが、業界の人間は全て本物だと知っていた。

これは全て紗希のせいだった!

詩織は口元に笑みを浮かべた。

「じゃあ先に下りましょう。後は玲奈で対処して。婚約式に影響を与えなければなんでもいいわ」

「詩織姉さん、心配しないで。私は必ず紗希をきちんと懲らしめるわ。楽しみにしていて」

詩織の口元の笑みがさらに深くなった。

詩織は階下に降りると、ホールに誰もいないことに気づいた。

おかしい、兄たちと拓海はどこだろう?

美蘭は笑いながら言った。

「詩織、あなたの兄さんたちと拓海はきっと外で話し合いをしているのよ。男たちのことは気にせず、後ろの婚約式会場に行きましょう」

詩織は無理に笑顔を作った。

そうかもしれない。

しかし彼女は、なんとも言えない違和感がを感じていた。

詩織は婚約式会場に着いても、兄たちも拓海も見当たらず、急に不安になった。

美蘭も少し様子がおかしいと感じた。

「詩織、私が拓海に電話してみるわ。どこに行ったのか確認してくる」

美蘭が去った後、詩織は風間の方を向いた。

「紗希さんはまだ来てないの?」

風間は渋々近づいてきた。

「申し訳ありません、小林さん。彼女はまだ到着していませんが、おそらく向かっている途中だと思います」

「まだなの?風間さん、これがあなたたちスタジオの態度なの?この設計の責任者である紗希は現場にも姿を見せず、どうやってあなたのスタジオがいい仕事ができると信じられるの?」

「申し訳ありません、小林さん。すぐに彼女に電話して急がせます」

風間は直接紗希に電話をかけたが、表情が曇り、最後には仕方なく答えた。

「小林さん、紗希の電話は電源が切れています」

玲奈はあざ笑った。

「電源オフ?もしか
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