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第247話

紗希は美蘭の言葉を聞いて、同じ疑問を持った。

今日は拓海の婚約式の日じゃないのか?

さっき彼が玲奈に紗希が義姉だと言ったのは、頭がおかしくなったのか?

拓海は、詩織が泣きそうになっているのが見えていないのか?

今日の詩織は、ウェディングドレスを纏った天使のように純粋に見えるが、拓海は気づいていないのか?

紗希が頭の中でツッコミを入れているとき、男が自分に近づいてくるのを見た。

彼女は、首が折れそうになるまで見上げて彼を見た。

このとき、彼女はこの男が本当に背が高いことに気づいた。

拓海は彼女の前に立ち、細い目で彼女をじっと見つめた。

紗希は少し落ち着かない表情をした。

全身を彼に見られて変な感じがした。

この男は薬でも飲み間違えたのか?

なぜこんなふうに自分を見るんだろう?

美蘭は諦めきれずにもう一度聞いた。

「拓海、私の質問に答えなさい」

拓海は眉をしかめ、邪魔されて少し不機嫌そうに答えた。

「他の女に俺が何の関係がある?」

「拓海!」

詩織は苦しそうに自分のウェディングドレスを持ち上げ、拓海に近づいた。

「拓海、今日は私たちの婚約式の日だということを忘れたの?」

拓海は薄い唇を引き結んだ。

紗希は横に立って、詩織を一瞥して、昔の自分を思い出した。

彼女も同じように拓海に無視されていた。

紗希は彼を見て言った。

「拓海さん、詩織があなたに話しかけているの、聞こえない?」

男は眉をひそめた。

「彼女は俺の婚約者じゃない!」

「それは私に説明する必要はないわ。今日の婚約式は私が直接デザインしたの。二人の幸せを祈っている」

紗希は数歩後ろに下がり、気楽なふりをして言った。

「そうそう、月末のおばあさんの手術の後、市役所に行くのを忘れないでね。そろそろ時期でしょ」

言い終わると、紗希は振り返ることなくその場を去った。

彼女はもうここにいたくなかった。

拓海は彼女が去っていく後ろ姿を見ながら、何を言って彼女を引き止めるべきか分からなかった。

「拓海、紗希のことは気にしないで。今日はあなたの婚約式。大切な日だよ」

美蘭は紗希が早く去ってくれて、拓海の婚約を邪魔しないことを願っていた。

拓海はしばらくその場に立っていて、やっと詩織の方を向いた。

彼の目は冷たく沈んでいた。

詩織は最初嬉しそうだったが、拓海
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