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第252話

北はこの言葉を聞いて、急に気分が良くなった。

妹はなんて優しくて可愛いんだ!

彼は、どんな男にも紗希を狙われないように、紗希から目を離さないようにしなければならないと思った。

特に、隣にいるこの男とは、可能性を絶対に排除しなければならなかった。

拓海は紗希が北に言った言葉を聞いた。

その声は甘えているように聞こえた!

彼は紗希がこんな風に自分に話しかけるのを聞いたことがなかった。

拓海は胸が何かに詰まって息ができないような感覚を覚えた。

こんな感覚は初めてだった!

彼は携帯電話をテーブルに置いた。

「要らない」

この携帯電話を買う必要はない。

そもそも自分はここに来るべきではなかった!

次の瞬間、北は素早く携帯電話を手に取り、拓海の肩を叩いた。

「ありがとう、拓海!」

「......」

この感謝の言葉は必要としていなかった。

拓海は、北が紗希の側に歩いていき、先ほどまで手にしていた携帯電話を彼女に渡すのを見た。

紗希が携帯電話を手に取ると、まだ拓海の手のひらの温もりが残っているような気がした。

彼女は唇を引き締めて何も言わなかった。

北は紗希の様子に気づいた。

「紗希、気に入らないの?」

「気に入ったわ。これにしましょう」

紗希は携帯電話にそれほど大きな要求はなかった。

彼女は落ち着いて顔を上げ、周りを見回すふりをしたが、彼の目と合ってしまった。

拓海の細長い目は彼女をずっと見ていて、彼女にも読み取れない感情を含んでいるようだった。

彼女は心の中で少し不思議に思った。

そういえば今日、婚約式で拓海を見た時、拓海が少し変な様子に見えた。

北は店員を見た。

「会計はどこ?」

「こちらです。ついてきてください」

北は隣に行って支払いをした。

紗希はその場で壊れた携帯電話を取り出し、SIMカードを新しい携帯電話に入れようとした。

しかし、携帯電話に少し問題があるようで、SIMカードが取り出せなかった。

次の瞬間、細い両手が彼女の目の前に伸び、彼女の携帯電話を取り、あっという間にSIMカードを取り出した。

紗希は唖然とし、我に返った時、SIMカードは既に拓海の手のひらにあった。

彼は手を彼女の前に差し出し、SIMカードを取るように示した。

紗希は深呼吸をした。

「ありがとう」

彼女は手を伸ばしてSI
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