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第258話

[......」

彼女は、拓海が慰めてくれると思っていた。

しかし、ただ我慢しろと言われただけだった。

紗希も、この状況では我慢する以外に方法がないことを知っていた。

拓海は口ではそう言ったが、実際は動作が優しくなっていた。

その時、向こうから男性の悲鳴が聞こえた。

紗希が顔を上げて見ると、迷彩服を着た男達が視界を遮っていて、何が起きているのかよく見えなかった。

でも声から判断するに、田舎からの男達が懲らしめられているようだった。

紗希は目を伏せ、足首に包帯が巻かれているのを見た。

それと同時に、かっこよくて真剣な男の横顔に気づいた

彼女は心臓の鼓動が急に速くなった。

次の瞬間、男が傷の手当てを終え顔を上げ、目が合った。

紗希はぼうっとして、彼の墨のように黒い目をずっと見つめていた。

拓海は落ち着かない様子で視線をそらした。

「他に具合の悪いところはある?」

「えーと、いいえ」

紗希も少し体を後ろにずらし、もう一度目の前の男の人を見た。

「あの、今回は助けてくれてありがとう」

拓海はやっと応急処置キットを置き、深い目で見つめた。

「お前の身の安全を守るために、次はもっと信頼できる男を選んで」

紗希は唇を噛んだ。

「先輩はどうなったの?」

男は軽蔑した口調で言った。

「たいしたことはないよ」

紗希は先輩が無事だと知って、随分安心した。

先輩は自分のせいで怪我をしたのだから。

あの状況で、誰がこの連中がこんなに横暴だと想像できただろうか。

拓海はあちらを見た。

「奴らをどうしたい?」

紗希は顔を上げ、彼の深い目を見つめた。

「私に聞いてるの?」

彼は眉をひそめ、少しいらだった様子で言った。

「お前でなければ誰に聞けばいい?ここは人里離れた場所で、死体をここに捨てても誰も見つけないぞ」

これを聞いて、紗希は背筋が寒くなり、唾を飲み込んだ。

「警察に通報しましょう」

紗希は少し不快になった。

「殺人は法律違反なのよ。私達がトラブルに巻き込まれたくないの」

拓海は「私達」という言葉を聞いて、薄い唇を少し曲げた。

「冗談だよ。本気にしたのか?」

紗希は歯を食いしばった。ひどい男だ!

さっきまで少し感動していたのに!

次の瞬間、拓海は顔を横に向けて部下を見た。

「奴らは何と言った?」

「全て白状
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