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第264話

中年女性は口を開いた。

「紗希、あなたも恩知らずすぎるわ。もし橋本家があなたを養子にしてくれなかったら、あなたはここまで平穏に暮らせたのかしら?」

養母は地面に座り込み、大声で泣き始めた。

「紗希、私はあなたのために良かれと思って結婚話を進めたのに、あなたは同意しないだけでなく、人身売買だと警察に通報するなんて。何を考えているの?」

「そうだよ、私たちの田舎ではみんながこうやって結婚の話をするのよ。誰も人身売買だなんて言わないわ」

もう一人の中年女性は一歩前に出て、紗希を見つめた。

「紗希、私の娘が寺平と結婚するところだったのよ。あなたが警察に通報して彼を逮捕させたせいで、結婚式はどうなると思う?」

寺平の隣にいた秋月は泣きながら言った。

「紗希姉さん、警察に行って彼を出してきて」

紗希は冷たい表情で言った。

「私を売ったお金を全部あなたにあげたって聞いたわ。あなたたちも不正な金を受け取ったんだから、警察に行くべきだよ」

秋月は表情が一瞬固まり、説明した。

「私が受け取ったのは結納金で、不正な金なんかじゃない」

「そうだよ。紗希、余計なことを言わないで。秋月はお腹の中に橋本の唯一の孫を宿しているんだから。赤ちゃんを恐がらせたらどうするんだ?」

紗希はにやりと笑って言った。

「本当にその子は寺平の子供なの?」

秋月の母は即座に大声で反論した。

「秋月のお腹の中にいる子が寺平の子じゃなかったら、誰の子だっていうの?紗希、でたらめを言わないで」

紗希は北をちらっと見た後、携帯電話を取り出し、あるビデオをタップした。

「この女性は他の人の愛人で、妊娠して正式な立場を得ようとしたけど、追い出されたわ。彼女は何度も中絶したせいで、もう妊娠できないから、急いで結婚して子供を産もうとしている馬鹿な男を見つけたのよ」

北も資料を投げた。

「これは彼女が以前私たちの病院で中絶した証拠だよ」

養母はその資料を取り、寺平の方を向いた。

「私は字が読めないから。あなたが見て?」

寺平はその資料を見て、顔色が真っ青になった。

「秋月、お前は以前恋人が何人かいたけど、中絶したことがないと言ったじゃないか!」

秋月と母は慌てふためいた。

紗希の数言で全てを暴いてしまったとは思わなかった。

秋月は急いで反論した。

「これらは全部偽物で、本当じ
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