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第266話

紗希は自分のお腹を撫でて、北を見た。

「北兄さん、風間は今どう?あの時、私を守ろうとして怪我をしたの」

「頭を殴られて軽い脳震盪だけど、大したことはない。今、入院してるよ。あいつが今回お前を助けて怪我したのは、まあまあかな」

「北兄さん、私と先輩はあなたが思っているような関係じゃない。それに、私には子供がいるし、こんな状況の私を受け入れてくれる男性はいないだろう」

北は眉をひそめた。

「紗希、赤ちゃんのことで落ち込まないで、俺たちがいるんだから、それは全然問題じゃない」

彼は風間の能力はまだ物足りないと思っていた。

紗希は北兄さんとこの件について議論せず、果物を買って入院している風間を見舞いに行った。

しかし、病室には風間一人ではなく、中年の女性がいた。

風間の母親のようだった。

彼女は少し申し訳なさそうに言った。

「先輩、今はどんな感じですか?」

「紗希、大丈夫だった?あなたに何か起こるんじゃないかと、本当に心配したんだ」

風間は紗希を見て笑顔を見せた。

彼の頭には白い包帯が巻かれていた。

隣にいた中年の女性は慌てて風間を支えた。

「気をつけて。まだ動き回ったら回復に影響する。彼女は大丈夫そうだけど、あなたがこんなにひどい怪我をしてしまった」

「母さん、そんなことを言わないで。僕は母さんにその状況を説明しましたか?紗希、わたしのお母さんの言葉は気にしないで。お前が無事でよかった」

紗希はこの中年の女性が風間の母親だと既に推測していた。

彼女は相手を見て言った。

「おばさん、申し訳ありません。今回は、確かに私のせいで先輩が怪我をしてしまいました」

「わかってくれればいいわ。うちの息子は体が強いので、こんなひどい怪我をしたのは初めてだよ。しかも頭を怪我して、もし将来何か後遺症が出たら、大変だわ。うちの息子はまだ独身だから」

中年の女性の言葉には不快感がこもっていた。

紗希は深呼吸して答えた。

「先輩は私のせいで怪我をしたんです。もし将来何か後遺症が出たら、私が責任を取ります」

中年の女性はようやく少し満足そうな顔をした。

「それならいいわよ。紗希さん、今私が厳しいことを言ったことを責めないでください。私は息子を一人でこんなに立派に育てた。万が一、風間に何かあったら、私はどうやって亡くなった父親に会えばいいの」

紗希
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