共有

第270話

紗希は直樹兄を誘惑しただけでなく、北兄まで誘惑していた!

さっき北兄は、渡辺おばあさんの手術をするのは誰のためか教えてくれなかった。

もしかして、紗希のためか?

詩織はこれまで理解できなかったことが、今やっと分かった。

これは紗希が引き起こしたのだ!

この女、兄を誘惑するなんて。

絶対に許さない!

詩織は部屋に入って紗希の正体を暴きたかったが、止まった。

今入っていけば、紗希はきっと何か言い訳をするだろう。

完璧な方法を考えて、一度で紗希の正体を暴き、解決しなければならない。

病室にいる紗希は、突然外を見た。

北は彼女の視線を追って「どうしたの?」と聞いた。

「何でもないわ。気のせいかもしれない」

紗希は外に誰かがいるような気がしたが、通りすがりの人かもしれないと思った。

北は果物を彼女に渡しながら言った。

「紗希、今回のことは拓海がかなり協力してくれた。彼の態度は少し変だったけど」

これを聞いて、紗希の表情は少し不自然になった。

「北兄さん、彼が協力してくれたのは渡辺おばあさんの顔を立てたからだよ。渡辺おばあさんは昔から私によくしてくれていて、私に何かあったら、きっと彼を責めるから」

「それだけが理由なの?」

紗希は頷いた。

「そうだよ、他の原因に何があるの?」

拓海が自分に未練があるとは思えない。

可能性がない!

拓海は離婚して、完全に自分から逃れたがっているのだ。

北は、紗希が拓海に対して特に感情がないようだったので、少し安心した。

鈍感なのも良いことだ。

そうすれば男に騙されにくい。

紗希は口を開いた。

「北兄さん、今晩退院して帰りたいの。病院にいたくないわ」

「分かった。家で休むのもいいだろう。具合が悪くなったらすぐに電話してくれ」

紗希はおとなしく頷いた。

しばらくして、彼女は退院して家に帰った。

病院にはいたくなかった。

北兄さんは、彼女が病院を出るまで付き添った。

隅の方で、詩織は北が紗希を車に乗せる様子を見て、表情が冷たくなった。

「紗希、よく隠しているわね」

詩織の助手が言った。

「お嬢様、紗希はきっと直樹のおかげで北さんと知り合ったんですよ」

「言われなくても、わかってるよ。紗希はただ男を利用して出世したいだけなのよ。今度こそ彼女に思い知らせてやる」

詩織の心の中には
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status