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第276話

「ごめん、時間がないの」

紗希は、このグループと一緒に食事や交流に出かける気にはなれなかった。

自分は今、妊婦なのだ。

「紗希、これはあなたの学校のプロジェクトだよ。少しも気にしないの?」

「私には関係ない!」

紗希は冷たい表情で、無関心な態度を見せた。

玲奈は言葉を失った。

今の紗希は別人のようで、全く弱味をつかめなかった。

玲奈は歯を食いしばって言った。

「紗希、調子に乗るんじゃないわよ」

「まあね。私は、あなた達が私を怒らせたいのに何もできずに戸惑う表情が好きなの。さようなら!」

紗希は皮肉っぽくそう言うと、すぐに立ち去った。

玲奈は怒りで地団駄を踏んでから、詩織のそばに戻った。

「あの女、逃げたわ。詩織姉さん、紗希はますます扱いにくくなってるわね。彼女は一体何であんなに偉そうなの?私達二人が全く目に入っていなようだわ」

詩織は表情が少し悪くなり、紗希が急に傲慢になった理由を考えた。

それはまさに、彼女が北と直樹を手に入れたことにある。

本当に、紗希という女を甘く見ていたようだ。

しかし彼女には、紗希を始末する方法がまだあった。

詩織は頭を整理すると、すぐに電話をかけた。

「もしもし、マネージャー?詩織よ。会社が青阪市で再開発のために土地を買収すると聞いたけど、私が経験を積みたいと思って...分社に少し学びに行けないかしら?」

電話の向こうの中年の男性はすぐに答えた。

「もちろんです。お嬢様が会社に視察に来てくださるのは、いつでも歓迎します」

「それなら、数日間邪魔するわ」

詩織は電話を切ると、冷たく言い放った。

「紗希をこのまま調子に乗らせておくわけにはいかないわ」

玲奈も得意げな表情を浮かべた。

「詩織姉さん、今回こそ紗希に目にものを見せてやりましょう。立ち退きができなくなったら、紗希みたいな貧乏人はきっと泣きながら許しを乞いに来るわよ」

詩織は軽蔑的な表情を浮かべた。

紗希のような貧乏人が、自分と戦う資格があるのだろうか?

一方、紗希が家に帰ると、三人の兄達がソファに座り、じっと自分を見ていることに気づいた。

紗希は少し戸惑いながら言った。

「健人兄さん、悠真兄さん、直樹兄さん、何かあったの?」

直樹は最初に口を開いた。

「あのね、紗希、いい知らせがあるんだ。この前、宝くじを買って20億円
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