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第275話

紗希は話し終えると、詩織と玲奈の顔に様々な醜い表情が浮かんでいるのが見えた。

玲奈は我慢できずに口を開いた。

「紗希、私達をからかってるの?」

紗希は薄笑いを浮かべた。

「そうよ、あなた達からかってるのよ」

玲奈は腹を立てて殴りかかろうとしたが、紗希は冷たく一瞥した。

「よく考えてよ。ここには大勢の人がいるわ。私を殴ったら、どう説明するつもり?」

「あなたを負かしたら、何を説明する必要がある?」

しかし、詩織は玲奈の手を掴んだ。

「行くわよ。私は仕事をもう一度確認したいので、ここで時間を無駄にする暇はない」

紗希の言う通り、今日、彼女は話題の人物としてここに来た。

もし玲奈が公衆の面前で殴りかかれば、今日のイベントは台無しになってしまう。

詩織は、紗希という嫌な女がこんなに手ごわくなったとは思わなかった。

やはり、彼女の兄に取り入ってから、紗希は傲慢になり始めたのだろう。

紗希、長くはそんな態度でいられないわよ。

紗希は彼女達が去るのを見届けてから、ゆっくりと視線を戻した。

隣にいた美咲は笑いすぎて涙が出そうだった。

「紗希、さっきは本当に笑っちゃった。あなたがビデオを録画していないと言った時、あの2人の顔といったら」

紗希は口元に冷たい笑みを浮かべた。

「品のない人間になると、世界がずっと優しく見えるわ」

「なるほどね。でも紗希、玲奈の隣にいたあの女は誰?」

「彼女の名前は詩織、三井不動産グループの社長の妹だわ」

美咲は一瞬たじろいだが、すぐに反応した。

「あの女があなたの元夫と結婚したがってたの?」

「うん、彼女よ」

紗希は目を伏せた。

「私と拓海の関係もすぐに終わるわ」

しかし、彼女の心の中には常に一つの疑問があった。

なぜ拓海は、詩織との婚約を取り消したのだろうか?

拓海は詩織の兄がこのことで手術を拒否するのを恐れなかったのだろうか?

あの日、彼女は病院で拓海に尋ねたが、その時、病室に来た兄達に二人の会話を中断されてしまった。

だから、彼女は答えを知らないままだった。

「紗希、さっきはすごくやってくれたけど、あの二人の女を怒らせて、今後もあなたとのトラブルが続くことを恐れているんじゃないの?お金持ちは私たちが手を出せるものじゃないから。これはただ、あなたの状況を心配しているだけよ」

「美咲、心
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