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第257話

紗希はヘリコプターの音を聞いて、突然心の底に希望が芽生えた。

ヘリコプターがここに理由もなく現れるはずがない!

もしかして兄達が来たのだろうか?

助手席の太郎は急に警戒し始めた。

「まさか警察が来たんじゃないか?」

運転手は笑って答えた。

「太郎、映画の見すぎだろ。警察がヘリコプターで来るわけないだろ。何度もこの道を通ってきたが、問題があるはずがない」

「じゃあ、ヘリコプターは何だ?今まで一度も見たことがないぞ」

「たぶん観光客か、テレビ局が写真を撮りに来たんだろう」

そう言われて、助手席の太郎も納得した。

ヘリコプターに乗って人を救いに来るはずがない。

ヘリコプターはとても高価なのだ。

やがて運転手はこう言った。

「ほら見ろ、ヘリコプターが飛び去った。俺達を狙ってきたんじゃないって言っただろう。まだ心配か?」

紗希はこの言葉を聞いて、ヘリコプターの轟音がかなり小さくなったことに気づいた。

本当に通りすがりだったのだろうか?

紗希は緊張し始めた。

この連中が大都市で人身売買をする勇気があるとは思わなかった!

今は、一体どうすればいいのだろうか?

本当に山奥で子供を産まなければならないのだろうか?

しばらくすると、車が急ブレーキをかけて止まった。

運転手は悪態をついた。

「くそ、なんで道の真ん中に大木が倒れてるんだ?これじゃあ通れないぞ」

「どうする?引き返すのか?」

「引き返すわけがない。みんな手伝って、この木々をどけてくれ」

男達は全員車から降りた。

紗希は一人で車の中にいた。

彼女は息を殺して慎重に体を起こし、外の様子を窺った。

見なければよかったと思うほど、彼女の心は凍りついた。

本当に山奥なんだ。

歩いて出ていくのは絶対に無理だ。

突然、周りから迷彩服を着た男達が現れ、あっという間に木を動かしていた男達を倒した。

紗希はこの光景を見て、心臓が高鳴った。

これは一体何者だろう?

突然、誰かがワゴン車のドアを開けた。

振り返ると、迷彩服を着た男が立っていた。

この男の顔には何かが塗られていたが、その細長い目は非常に見覚えがあった。

拓海?

男は車のドアの前に立ち、彼女の手足の縄を全て切った。

彼女の手首と足首の縄跡を見て、男の目が冷たくなった。

拓海はその冷たさを隠し、顔を上げて彼女
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