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第256話

風間はこの場面を見て、一瞬怖くなった。

しかし、これが最高のチャンスだと思い、強気な言葉を続けた。

「近づくな。今は法治社会で、至る所に監視カメラがある。逃げられると思うのか?お前らのような社会のクズは、永遠に田舎に留まって山の中で死ぬべきだ。二度と出てきて恥をさらすな......」

風間は言い終わるや否や、誰かに頭を強く殴られた。

紗希は風間の頭から血が流れてくるのを見て、慌てた。

「先輩、大丈夫ですか?」

風間はそのまま地面に倒れた。

紗希は携帯電話を取り出して警察に通報しようとしたが、手足を縛られてそのまま連れ去られた。

近くに古びたワゴン車が止まっていて、彼女は後部座席に押し込まれた。

その時やっと、この連中が今回、計画的にやってきたということに気づいた。

彼女は油断していた。

紗希は前の座席に乗り込む太郎を見つめながら言った。

「私をこうして連れ去るのは違法よ。私の家族がすぐに私を見つけるわ」

太郎は冷ややかに笑った。

「心配しないで、紗希。俺たちの田舎に着いたら、誰もお前を連れ出せないさ。以前にも探しに来た奴らがいたが、どうすることもできなかったんだ」

「太郎、今回は美しい妻を手に入れたね。おめでとう。都会の大学生は普通の人とは違って、子供ができたら、きっと賢くて可愛いだろう」

太郎は得意げに笑った。

「当然だ。男の子を何人か産んでもらわないと、200万円の結納金が無駄になるからな」

紗希は後部座席でそれを聞き、絶望感に包まれた。

彼女は、兄たちが早く知って、自分を探しに来てくれることを願うしかなかった。

冷静にならなければいけない。

過激な行動をして傷つくわけにはいかない。

お腹の中には赤ちゃんがいるから、慎重に行動しなければならなかった。

ワゴン車はすぐに町を出て高速道路に乗った。

彼らの目的は明らかで、すぐに彼女を山奥に連れ帰ることこそが安全だと考えていた。

やがて、日が暮れた。

紗希は目を閉じる勇気が出なかった。

寝てしまって目が覚めたら、見知らぬ場所に連れて行かれているかもしれないと恐れていた。

どれくらい時間が経ったかわからないが、ワゴン車は名も知らない田舎道で停まった。

一行は車から降りて食事をし、休憩を取った。

太郎は振り返って彼女を見た。

「何か食べろ。お前が大人しくさえして
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