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第8話

伊藤家は安市でトップクラスの大財閥ではないが、その成長は非常に早く、私の1歳の誕生日会には、上流社会の人々も顔を立てて出席してくれていた。

来賓が次々と訪れていた。

伊藤家と篠崎家は政略結婚を結んでおり、篠崎家も早々に姿を見せた。

篠崎家を代表して現れたのは、若い男だった。彼の顔には少し軽薄さがあり、典型的な遊び人のような顔つきだった。

彼は亮介に軽く挨拶をすると、私に近づき、頭を撫でようとした。

私はすぐに亮介の首にしがみつき、顔をそむけ、明らかに拒絶の意思を示した。

「子供は見知らぬ人を怖がるんですよね」亮介は適当に笑ってごまかした。

その男も笑い、それほど気にしていない様子で、静かに言った。

「これからは、うちと伊藤家で、もっとお付き合いを深めていきましょう。そう思いませんか?」

その声…

私はさらに強く亮介の胸に身を寄せた。

亮介の大きな手が私の背中を優しく撫でていたが、私は恐怖で震えていた。

あの暗く冷たいトイレの中、彼の手が私の背中を這い回り、時折私の肉を掴んでいた。

彼の口元が私の耳元に近づき、「君の顔は本当に綺麗だな、うん?」と囁いた声…

やっぱり、彼だった。

彼は篠崎玲子の兄だったのだ!

まさに蛇の巣だ!

「どうした、宝物?」

亮介が優しく尋ねた。

「怖い!」

私は篠崎風を見る勇気もなく、顔を亮介の肩に埋めた。

亮介は明らかに篠崎風に対する態度が冷たくなり、淡々とした口調で言った。

「子供をあやしてくる。お前は妹でも見に行ってやれ」

篠崎風は少し怪しげな顔をして亮介を一瞥した後、階段を上っていった。

私は彼の背中を見送りながら、目に憎悪の炎を灯していた。

篠崎家、絶対にお前たちを許さない!
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