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第7話

私は必死に母に触れようとしたが、透明な手は何度も彼女の体をすり抜けてしまうだけだった。

何度も何度も、私は初陽に哀願した。

母を助けて、と。

だが、彼には聞こえない。

彼はただ、少し苛立ったように「チッ」と舌打ちしただけだった。

柚咲は冷笑を浮かべた。「母娘揃って、よく死んだふりをするものね」

違う、違うんだ――

母は死んだふりなんてしていない!

彼女は癌を患っていて、余命もわずかなのに、私のような不孝な娘のためにこれほど苦しんでいる。

罪悪感と後悔が波のように押し寄せ、私を溺れさせた。

十四歳のあの時、初陽に出会ったことを心から悔やんだ。

もしもう一度やり直せるなら、あの時に戻って。

彼を殺していただろう。

子弥が母の体を蹴り飛ばし、「おい、起きろよ。まだ犬みたいに吠えてもらってないぞ!」と言った。

またしても嘲笑が湧き上がった。

だがすぐに、子弥は何かがおかしいと気づき、戸惑いの表情を浮かべた。「本当に気絶したみたいだな?」

全員が互いに顔を見合わせた。

柚咲だけは、「また演技でしょ」と軽蔑の表情を浮かべていた。

だが、初陽の眉がわずかにひそめられた。

彼は立ち上がり、「119を呼んで病院に連れて行け」と指示した。

そのまま、整形病院に電話をかけ、「汐音はまだそちらで入院しているよな?」と言った。

「彼女に知らせてやれよ。母親が倒れたから、病院に行って看病しろってな」

「俺たちが面倒見るなんて思うなよ」

電話の向こうで、看護師が慎重に答えた。「山口社長、まだご存知ないのですか?」

「立川さんは、すでに亡くなっています」

「二日前、手術中に大量出血と血管塞栓、そして顔面神経が壊死してしまって......私たちはすぐに救急搬送しましたが、助けることができませんでした」

「お母様がすでに彼女を引き取り、火葬されたと聞いています」

初陽はその場で動きを止め、視線が一瞬、虚ろになった。
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