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第88話

三千院とわこは常盤家に戻らなかった。

病気の常盤奏の見舞いにも行かなかった。

今回は、彼女の冷徹さに誰もが驚いた。

しかし、彼女の他にも常盤奏に対して酷い仕打ちをした人物がもう一人いた。

それは武田一郎だった。

とわこが常盤家に戻らず、病院の常盤奏に対して一切関心を示さなかったため、武田は毎日常盤奏のそばで、とわこの日々のスケジュールを詳細に報告していた。

例えば、「今日は三千院とわこが信和株式会社に行って、三木和彦と楽しい午前を過ごした」とか、「今日は三木和彦が三千院とわこを美術展に連れて行き、一緒に昼食を食べた」といったことなど。

その内容が真実かどうかは重要ではなかった。

大切なのは、常盤奏を怒らせることだった。

怒らせることで、ようやく彼は治療に協力するようになった。

病気が治らなければ、復讐も果たせない。

武田は常盤奏の性格をよく理解しているため、彼を日々苛立たせることで治療に全力を尽くさせた。

最終的に、薬で彼の病気は少しずつ直った。

顔色はまだ青白く、咳が止まらず、体も弱かったが、それでも強い決意を見せて外出しようとした。

その理由は、武田が彼に「今日は三木和彦が三千院とわこをAI技術に関するイベントに連れて行く」と話したからだった。

この数日、常盤奏はベッドに横たわりながら多くのことを考えた。

三木和彦のことについて、記憶は薄れていたが、病気のきっかけで、過去のことを思い出した。

三木和彦は機会主義者だ。

彼が友人を作るのも、何かをするときも、すべてが綿密に計算されており、それが自分にどれだけの利益をもたらすのかを考えている。

さらに、彼は見事なまでに偽装が上手い。

たとえ敵に対しても、笑顔を絶やさず、相手が油断したところを見計らって一撃を加える。

常盤奏が彼と距離を置いた理由は、性格の不一致のほかに、投資理念の違いもあった。

三木和彦はお金のためなら手段を選ばない。彼は権力者を巻き込み、不正な金を自分のものにすることが得意だ。

常盤奏も利益のために手段を選ばないが、彼には自分の限界があった。

たとえ利益が目の前にあっても、一線を越えることはしない。

とわこが三木和彦と近づきすぎると、いずれ彼に引きずり込まれることになるだろう。

「奏、医者は少なくとも一週間は安静にしていないと外出できないと言ってい
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