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第175話

 どんなことがあっても、彼女はただ待つわけにはいかなかった!

 水原爺は車に乗って次男の家へ向かった。

 香織も屋敷を出て、玄関先に立ちながら、誰が彼女の子供をさらったのかと必死に考え続けた。

 ブンブン——

 突然、携帯が鳴り始めた。

 彼女は出た。

 向こうから恵子の声が急いで言った。「香織、早く戻ってきて!」

 香織は尋ねた。「どうしたの?」

 「誰かがあなたを探している。子供がその人の手にあるんだ」

 双の行方を聞いて、彼女はすぐに活力を取り戻し、「すぐに戻る」と答えた。

 彼女は急いで携帯でタクシーを呼んだ。

 ちょうどその時、車が一台近づいてきて、誠が車から降りてきた。

 香織を見て、彼はちょっと目をそらしました。

 香織も誠がこのタイミングで来たことに驚き、「なぜここに来たの?」と尋ねた。

 誠は「取る物があって来たんです」と言い、

すぐに屋敷に入っていった。

 香織は深く問い詰めなかった。今は双のことしか頭になかった。

 子供以上に大切なものはなかった。

 ほどなくして誠は箱を手にして戻ってきた。

 その箱は香織も見たことがあった。

 そして水原爺が言っていた、圭介にとって非常に重要な物だった。

 彼女は好奇心から尋ねた。「それを持ち出してどうするの?」

 誠は正直に答えた。「水原様に頼まれて明日香に渡します」

 香織は一瞬、呆然とした。

 「それは彼にとって非常に大事な物じゃないの?」香織は尋ねた。

 誠は香織の目を直視できずに言った。「どんなに貴重でもただの物です。矢崎さん、これからはあなたの会社に行く時間がなくなるかもしれません。助けが必要なら他の人を探してください」

そう言って誠は車に乗り込んだ。

香織は追いかけて言った。「誠、ちゃんと説明して、どういうこと?」

「水原様の指示です。私は言われた通りにしただけです。何か疑問があるなら直接水原様に聞いてください」そう言うと誠は車を発進させた。

「圭介がそう言ったの?」彼女は問い詰めた。

誠はため息をついて言った。「水原様はあなたに本当に良くしてくれました。あなたは、私が彼を知っている限り、最も辛抱強く、最も好きな人でした。しかし、あなたは何度も彼から逃げ、彼を他の女の元に押しやりました。おそらく水原様はあなたに失望したのでしょう……」
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