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第182話

香織という二文字を聞いて、圭介はようやく書類から目を離し、目を上げた。

すると恭平は得意げに、わざと書類を裏返し、圭介に写真と二人の名前を見せた。「見えますか?」

圭介の表情は水のように穏やかで、さざ波ひとつ立っていなかった。「恭平、俺は香織にもう用はない。お幸せに」

恭平は圭介がフリをするのが得意だと知っていたので、彼の皮肉を気にしなかった。「用がないとおっしゃいますが、それは会長に見る目がないということではないでしょうか。私は彼女に男がいたことを気にしません。それに、彼女はこれから私のものになります。私は彼女を手に入れることができたのは、彼女を手放し、私のところに行かせてくれた会長のおかげです。感謝しなければなりません。心配なさらないでください、私は必ず彼女を大事にします」

「失せろ!」圭介は書類の最後の署名欄に自分のサインを殴り書きし、そのまま書類を閉じて傍に投げ捨てた。

恭平は、春風がそっと頬をかすめるように笑い、打ちのめしたいような様子で言った。「土曜日ですよ、忘れずに来てください」

圭介は唇の端を上げ、その口角の弧が少し醜く見えた。

恭平は結婚式の招待状をしまった。「それでは土曜に会いましょう」

そう言うと、恭平は口笛を吹きながら、誇らしげに圭介のオフィスから出て行った。

ドアが閉まると、圭介の穏やかだった表情は一瞬にして怒りに変わった!

「香織!」

彼は歯を食いしばった。

彼女は恭平と結婚するためだけに、他の女に自分を押し付けたのか?

なんてお人好しなんだ!

あの女は彼の心に値しない、彼の好みに値しない、彼の愛に値しないと自分に言い聞かせた。

しかし、彼女が他の男と結婚しようとしていることを知ると、彼はやはり腹が立った。

彼は息苦しく、圧迫感を感じて呼吸が出来なかった。

「水原会長…」明日香はノックもせずにドアを開けて入ってきた。

今の圭介は怒っていて、ドアをノックもせず入ってきたことに対して、さらに苛立ち、声を荒げ 「出ていけ!」と言った。

明日香は恐怖で固まり、書類を握りしめ、パニックでドアを閉めた。

圭介があんなに怒ったのを見たのは初めてだった!

動悸がした!

明日香は心の中で、圭介は怒っている、このタイミングで彼の癪に障らない方がいいと思い、振り返ってその場を離れようとしていたら、慌ただしく誠がやって
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