第321話

私の心臓は何かに引きつけられたようだった。

服部鷹が言ったように、それは潜在意識のもので、どこから来るのかはわからなかった。

彼の表情に浮かぶ悲しみを見て、私はふとした衝動でつま先立ちになり、手を伸ばして彼の頭を撫でようとした。

しかし、手が半分まで伸びたところで我に返り、空中で止まった。彼の褐色の目を見つめながら、優しく言った。「服部鷹、彼女はあなたを責めたりしないよ」

彼の目が一瞬輝いたが、私の動きが止まると、平淡な表情に戻った。「お前は彼女じゃない、どうして彼女の気持ちがわかるんだ」

「私は彼女と似たような経験をしてる」

私は視線を下げ、苦い気持ちで言った。「かつてはとても良い生活をしてたのに、突然両親を失って、自分一人で必死に生きてきた」

再び彼を見つめ、優しく微笑んだ。「もし私が彼女なら、絶対にあなたを責めない。彼女も......きっとそうだと思う」

苦しい思いをしている人は、より共感できるんだ。

彼がこれほど長く待てたのなら、それで十分だった。

彼は少し心を動かされ、滅多に見せない柔らかさで言った。「お前はこの数年、辛いと思ったことがあるか？」

「子供の頃はそう思った」

私は深呼吸して、部屋のなじみのある様子を見渡しながら微笑んだ。「そのうち慣れてしまった。この数年、江川家でとても恵まれて過ごしてるから、なおさら辛いとは言えない」

服部鷹は私を見つめた。「それなら、毎日楽しいのか？」

私は呆然と笑い、庭に出た。「若様よ、ほとんどの人が普通に生きるだけで全力を尽くしてるんだから、毎日楽しいわけがないでしょう？」

「そうか」

「じゃあ、あなたは？楽しいの？」

服部鷹も長い足を使って外に出て、振り返ってドアを閉め、私を横目で見た。「お前はわかるだろう」

彼は楽しくないようだった。

おそらく、藤原奈子が消えてから、彼はもう楽しむことができなくなったのだろう。

「ふう」

私は肩をすくめ、これ以上は言わなかった。

彼は私を藤原おばあさんの庭に連れて行った。「おばあさんはお前に藤原家に住んでもらいたいと思ってるけど、ホテルに泊まりたいなら、俺がおばあさんに言うよ」

「いいえ」

私は頭を振った。「おばあさんと一緒に過ごすことにする」

多分、小さい頃におばあさんの愛情を体験したことがないから、私は藤原おばあさんと一緒にいる