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第323話

私は一瞬驚いた。「え?」

「私を信じて」

服部花はソファにあぐらをかいて座り、本気そうで言った。「彼は今、躊躇ってるの。姉さんを好きだけど、好きでいるのが怖いんだ」

私は笑った。「無駄な推測だよ。彼が好きなのは藤原奈子で、私は彼女に似てるだけ......」

「違うよ!」

服部花は即座に反論した。「兄はそういう人じゃない。何年も、姉さんより奈子姉さんに似た人がいたのに、彼は一度も目を向けなかった。悪く言うつもりはないけど、彼はいつも利益がなければ動かないタイプで、姉さんが好きだからこそ、何度も助けたんだ」

「それは......」

私は反論しようとしたが、途中で理由が見つからなかった。

金沢世之介のこと、藤原奥さんに無理やり雪の中でひざまずかされたこと......あれもただの通りすがりの助けではなかった。

その後、彼は私に何かを求めたこともなかった。

......

帰るとき、私は少し心ここにあらずだった。

昨日、おばあさんが意図的に仲を取り持とうとして、今日、服部花がこんなことを言った。

どんなに気を散らさないようにしても、多少は影響を受けてしまうから。

ただ、服部家旧宅の門を出た瞬間、見覚えのあるカリナンが見えた。

私は急ぎ足で、おばあさんが手配してくれたロールスロイスのところへ向かった。

乗り込む直前、突然手首を掴まれて、別の方向に引っ張られた!

私は怒った。「江川宏、何をしてるの?!」

「家に帰って年を越すんだ!」

江川宏は声が低く、疲れがにじみ出ていたが、力強く手を引いていた。

私は無様に思えた。「どこの家に帰るの?私たちには何の関係もないのに!」

結婚記念日を他の人と過ごした男が、今になって家に帰ると言うなんて。

「関係がないなら、再び関係を持てばいい」

彼は恐ろしいほどの執着を見せた。

私は必死で抵抗した。「でも私は望んでない......」

彼は急に振り向き、私を車の側面に押し付けた。目は赤く、長い間きちんとした睡眠をとっていないようで、額の血管が浮き出ていた。「じゃあ、誰と関係を持ちたいの、服部鷹と?正月にわざわざ大阪に来て、彼と年越ししたいのか?」

私は冷笑した。「あなたが口出しすることじゃない。離婚したから、何をするのも私の自由だ」

「南、君には自由をあげられる」

彼は私をじっと見つめ、ため息をつ
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