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第177話

「俺はできる、薬も持っている」

江川宏は立ち上がり、歩いてこちらに近づいた。「教えてあげる」

「それなら、自分で変えればいいじゃないか」

言い終わると、私は去ろうとすた。

「清水南」

彼の乾いた手が突然私の手を握り、声は砂利を混ぜたように響いた。「痛い」

簡単な言葉が、私の心の防衛線を突如崩壊させた。

しかも、銃傷だから、適当にはできなかった。

私は彼を見つめ、疑問を持って言った。「江川宏、以前気づかなかったけど、自分惨めな様子を他人に見せるのが上手だよね」

彼は目を下げ、無関心そうに言った。「それなら、俺がかわいそうと思う?」

「……思わない」

私がこの言葉を捨てる瞬間、彼に力強く引き戻された。男は今までにないほど高貴な頭を下げて、言った。「本当に痛い」

この瞬間、私自身も自分を罵りたくなった。清水南、あなたは本当に卑しい。

しかし、彼の傷を思うと、私は心を鬼にすることができなかった。

男性を心配すると不運になるという諺が。

間違ってないんだ。

結局私は妥協した。「薬はどこにある?」

彼は優しく言った。「ソファの上にあるよ」

私はソファのそばに行ってバッグを持ってきた時、彼はすでにベッドのそばに座っていて、私の動きに目を移動させずにじっと見つめていた。

私はバッグを開けて中身を見ると、ガーゼ、ヨード、止血薬などがあった。

全ては整っていた。

彼を疑いながら見つめていた。「そんなに準備が整っているけど、江川アナがお前に薬を変えるのを待っているのか?」

――彼女は恐らく来れないだろう。お前の父親と一緒にいるから。

心の中で一言補足した。

江川宏は眉をひそめて言った。「清水南、お前の頭は、ご飯を食べる機能しかないのか?」

「……」

彼の毒舌を経験するのは初めてではないし、何かを論争する気もなかった。静かに言った。「服を脱いで」

彼が服を脱いだ後、私はそっとガーゼを取り外し、その血だらけの傷を見た瞬間、自分の心臓が激しく痛んだ。

突然、彼がなぜあんなに無謀にも私のためにその銃弾を受け止めたのか考え始めた。

利益を追い求め、危険を避けることが人間の本性ではないだろうか。

答えが得られなく、彼の傷を慎重に処理するしかなかった。彼は薬を変える方法を教えてくれただけで、余計な言葉は一言もなかった。

ただ、額には細かい汗
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