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第009話 真実

私は思わず叫び声を上げてしまった。

美咲は驚いた表情で後ずさり、まさか浩が自分に手を出すとは思っていなかったようだ。

「驚いたか?あの時、お前の父親も同じように俺の両親に始末されたんだよ」

彼は無表情のまま、手に付いた血をティッシュで拭き取った。

その言葉を聞いた美咲は、まるで雷に打たれたかのようにその場に崩れ落ちた。

彼女は涙で顔を濡らし、震える声で浩を睨んで問いかける。「どうして......?」

浩は首をかしげて笑みを浮かべる。「どうしてだって?もちろん金のためさ!俺の取り分が他人に半分も奪われるなんてまっぴらごめんだ。それに、殺人の罪をお前に着せれば、俺は罪を逃れることができる。一石二鳥だろう?」

美咲は哀しげに笑い、そして静かに息絶えた。

浩はゆっくりと私の前に歩み寄り、見下ろしてくる。

私は深く息を吐いた。

「どうやら、私もここで死ぬしかなさそうだな。

死ぬ前に、あんたの計画を聞かせてくれないか?どうせなら、納得して死にたいもんだ」

彼は周りを見回して言った。「時間稼ぎをしても無駄だ。ここに誰かが来ることはないよ」

私は必死に哀願し、彼の計画をどうしても知りたい、さもなくば死んでも死にきれない、と伝えた。

もしかしたら浩は完全に勝利を確信していたのかもしれない。あるいは、長年の付き合いで私に対して多少の感情があったのだろう。彼はついに、私の願いを受け入れてくれた。

「いいだろう」

彼はその場に座り込み、ゆっくりと計画を語り始めた。

当初、浩は私が退院したらすぐに殺すつもりだった。しかし、私が記憶を失っていることに気づくと、彼は別の考えを抱いた。

記憶を失い、両親から莫大な遺産を相続した私――そんな女と結婚すれば、浩の一家は一生食うに困らなくなる。しかも、いつ私が記憶を取り戻すかもしれない不安を抱きながらも、常に監視できる立場にいられる。

時間がたって、彼は本気で、私とそのまま一生を過ごそうと考えていた。だが、私が叔母の遺産まで相続したことが分かったとき、事態は一変した。

膨大な財産を前にして、浩一家の間に亀裂が生じたのだ。

浩はその遺産の半分を独り占めしようとしたが、弟の光はそれに反対した。

二人が口論したあの日の深夜、彼はそっと光の部屋に忍び込んだ。光は浩に、「もし金を分けないなら、あの時のことを警察に話すぞ」
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