第010話 黄雀、後に在り

私の言葉には、まるで何か不思議な力が宿っているかのように、地面に倒れていた男は突然、呻き声を止めた。

彼は口を開いたが、痛みで顔を歪め、冷や汗が額に滲んだ。

「腹筋と腰の力を使わなきゃ話せないだろう。あとは私が代わりに話してやるよ」

私はゆっくりと真実を語り始めた。

「あんたは私の夫、中村浩なんかじゃない。あんたは彼の弟、中村光だ。

地下室で死んでいたのが、本物の中村浩だ！」

男は強情だった。腰の痛みを無理にこらえ、震える声で言い返してきた。

「お、お前......何を言ってるんだ......俺は......俺こそ中村浩だ......」

私はつい拍手をした。

「いやぁ、素晴らしい演技だ。こんなに重傷を負ってもなお芝居を続けるなんて、あんたが俳優にならなかったのが残念だよ」

それでも彼は認めようとしなかった。私は彼の腰にもう一度蹴りを入れると、彼は喉が裂けるような凄まじい悲鳴を上げた。

「あんた、本当に間抜けだな。死体のそばに自分の社員証を置いて、私にあれが『中村光』だと思わせるつもりだったのか？

でもな、あんたたちは同じ母親から生まれた兄弟だってのに、浩が左利きだってことを忘れたのか？

なのに、あんたは右手でナイフを持っていたんだよ！」

男は私をじっと見つめ、目には驚きを隠しきれない様子だった。

すると、彼はすぐに自嘲するような笑いを浮かべた。

「まさか、こんな些細なことで正体がバレたとはな......」

そうだよ。お前の言った通り、俺は中村光だ」

光が自分の正体を認めたが、私は特に驚くこともなかった。

彼は私に尋ねた。「いつ気づいたんだ？」

「薬を届けに来た夜、あんたが光だとわかった」

光は焦りすぎたのだ。私に自白剤を飲ませた直後、すぐにカードの暗証番号を聞いてきた。そんなことをされて疑わないわけがない。

その時、私は彼が右手でグラスの破片を拾うのを見て、彼が浩ではないと確信した。

地下室の死体は、右手に腕時計をしていた。左利きの浩だけがそんなことをするはずだ。

私はスマホを取り出し、画面のメッセージを指さしながら、静かに読み上げた。

「銀行に行くな！

死ぬぞ！早く逃げろ！

そいつはお前の夫じゃない！」

「このメッセージはきっと浩が送ったものだ。あんたが私を殺そうとしているのに気づいて、彼はこの方法で私に警告