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第2話

「一緒にいてくれるって言ったじゃない?誰と電話しているの?」

松井里奈だ。

甘くて優しい声。

そして怒ったふりをするためのセリフ。これは女性特有の甘え方だ。

亮介はこの手に弱い。

私はLINE VOOMを開いた。すると、彼女の新しい投稿を見つけた。

「誰かは深夜にそばにいて、海を眺めている」

画像には、背の高い男性の後ろ姿で、暖かいキャメル色のウールコートを着てる。頭上には星空が広がり、周りには青い海があり、目の前には二つのずれた影がある。それは男と女だと簡単にわかる。

ぼんやりとしていて、あいまいな感じ。

下には友達のコメントがあり、ほとんどが羨ましがったり冗談を言ったりしている。

それは彼ら二人だけの特別な世界だ。

そして、そのコートは私が彼に贈った誕生日プレゼントだった。数日前、夫がそれを着て友人の誕生日パーティーに参加した。

当時、みんなが私の目の良さを褒めていて、亮介もこのコートをよく着ていた。

私は写真の中の亮介の姿をじっと見つめ、「いいね」を押した。

私が退院した日は大雨が降っていて、亮介が病院に迎えに来てくれた。

まさか亮介が来るとは思わなかった。

今日は気温が下がり、亮介はそのコートを着ていて、彼の姿勢は相変わらず堂々としている。

実際、キャメル色は人によく似合う。この人はこの色が一番好きだ。

しかし、私はすっかり痩せてしまい、顔色は青白く、目はくぼんでいる。大きな服が身にかかっていて、言いようのない無気力感が漂っている。

私を見たその瞬間、亮介の目には一瞬の疑問が浮かんだが、すぐに消えてしまった。

私は亮介と車の中に座っていて、誰も話さなかった。私は窓の外をぼんやりと見つめ、雨が窓に落ちていき、視線がぼやけてしまった。

初めて涼介に会った日も同じような大雨だった。

私は車が家とは反対の方向に向かっていることに気づかなかった。

車が「金庭」に停まった瞬間、私は亮介が車の中にまだ人が乗っていることを忘れてしまったのかと思った。

私は亮介について個室に来ました。中は賑やかで、音楽がうるさくて心臓が痛くなった。

個室には亮介の仲間たちと、中央に座っている里奈がいた。

「お姉さん、来たね!」と皆が叫んだ。しかし、あまり尊重を感じられなかった。

皆が私を一通り見ていた。

大きなコートの中には普通の白いTシャツがあり、足元には履き替えられなかったスリッパがあった。雨が降ったせいで、泥がついて汚れてしまった。

「今日は私の誕生日だよ。もしお姉さんが本当に来たくなかったら、断ってもよかったのに、わざわざこんな風に来る必要は……なかったのに。」

皆の視線が私に集まった。侮蔑するような、軽蔑するような、見下したような。

里奈はさらに涙を浮かべていた。彼女は辛そうな顔で亮介を見つめた。

私は亮介に振り向いて、小声で尋ねた。

「亮介、これはどういう意味なの?」

亮介はドアの隣に立っている私を無視して、里奈のそばに座った。

すると、小声で慰めた。「誰が不快にさせたんだ?罵ってやれよ。僕がついてるから、何も怖がることはない」

「亮介兄ちゃん、私が苦しむのを見たくないのはわかってるけど、相手はお姉さんだし……」

里奈は言い終わると、何かに気づいたように驚き、私のそばに駆け寄って腕を抱えた。私はその親密な姿勢は不快に感じた。

「柚希姉さん、亮介兄ちゃんを怒らせないで。亮介兄さん、私は辛いのを見たくない。だって私たちは……」

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